■ 5.真相を求める
「そっか。大変だったんだね。咲ちゃん。」
何時の間にこんなに握りしめていたのだろう。
私の手のひらに爪が食い込んで血が流れていた。
それに気付いた京楽が私の手をとり優しく開く。
「何も知らなくて、ごめん。」
『いいんだ。私も何も話さなかったのだから。』
京楽も浮竹も私の話を聞いて、悲痛な表情を浮かべていた。
「して、何故また死神になったのじゃ?」
山じいが私に問う。
『私が霊術院の教師をしていたころ、流魂街である死神を見かけたのだ。私には、その死神の顔が見えなかった。何かで真っ黒に塗りつぶされているように見えたのだ。そしてその気配は、あの日私が父に感じたものだった。父は必ずここに居る。そして、私を待っている。そんな気がするんだ。だから、私は自分で探す。』
「では、儂は見届けよう。手出しはせぬ。好きにしなさい。・・・そのようなことがあったとは儂も知らなんだ。よく戻ったの、咲夜。」
その言葉とともに山じいは私の頭を撫でた。
『はい、先生。』
その温かさに、思わず涙が零れたのだった。
山じいに挨拶をして隊主室から出る。
京楽たちは山じいに用があるらしい。
一人で、人気の少ない隊舎を歩く。
全てを話したせいか、心が軽くなった。
ずっと一人で抱えていくものだと思って居たのに。
私のせいで隊長は死んだのだから。
私が巻き込んでしまったのだから。
隊長は、浮竹たちとも仲が良かった。
よく四人で酒を呑んだ。
隊長は呑むと饒舌になった。
いつもは隊長歴が長い浮竹たちに遠慮していたが、その時は浮竹たちと対等に色々な話をしていた。
私はそれを見ているのが好きだった。
浮竹も京楽も、隊長と話すのが好きなようだった。
あの、穏やかな時間が好きだった。
・・・なぜ隊長は死んだのだろうか。
絶対に父を見つけ出してやる。
そして、すべてを終わりにしよう。
私はそのために戻ってきたのだから。
[
prev /
next ]