蒼の瞳、紅の瞳
■ 双子 後編

「・・・さて、では私たちは仕事に戻りましょうか。」
浮竹たちを見送った卯ノ花隊長が静かに言う。
皆がそれに頷いて、長い茶会が終わることにほっと一息ついた。
それぞれ総隊長に礼を述べて、茶室から出て行く。


『・・・いやぁ、流石橙晴と茶羅だな。山じいの長い茶会を一瞬で終わらせるなんて。』
皆と別れて一人になったところで、上から声が降りてくる。
見上げれば、塀の上に咲夜と青藍の姿があった。
楽しげな咲夜に対して、青藍は苦笑を浮かべている。


「随分な無茶ぶりをしてくれたな、咲夜。」
『あはは。いいじゃないか。青藍の時よりは楽だろう。』
「青藍は・・・大変だったな。本当に。」
白哉は数年前のことを思い出して、思わず溜め息を吐く。


「父上・・・。ため息を吐くのはやめてください。睦月に教えられて、僕、寝込んだんですからね・・・。」
「トラウマを連想させるのは解っていたのだがな・・・。」
唇を尖らせた青藍に苦笑した。


『顔を青くしたと思ったら、そのまま調子を悪くしたからな・・・。だが、耐性をつけさせるためにはちゃんと説明した方がいいだろう、という話になったのだ。』
「荒療治にも程があります・・・。」
「あの程度で寝込むとは、こちらも想定外だったのだ。」


『いいじゃないか。結果として、一つ耐性が付いた。君には必要なことだぞ、青藍。』
「それはそうですけど・・・何も男同士の方まで教えなくたって・・・。」
思い出したのか、青藍は小さくその身を震わせる。
『君を狙う男も居るのだから、仕方あるまい。この間も媚薬が盛られていたぞ。』
「・・・気を付けます。」


「あまり青藍を脅かすな、咲夜。乗り越えなければならぬことは、青藍が一番よく解っている。気を付けさせることに越したことはないのも事実だが。」
『まぁ、そうだな。とりあえず、今のところは私たちが護ってやれる。何かあれば全力で霊圧を上げろ。そうしたら、私たちがどこへでも飛んでいく。解ったか、青藍?』
「はい。頼りにしています。」


『よし。』
ぐりぐりと咲夜に撫でられて、青藍は若干不満げだ。
「・・・橙晴や茶羅と同じ撫で方をするのはそろそろやめてください。」
『あはは。もう少し強くなったら考えてやる。』
「母上ったら、意地が悪い・・・。」


「そう膨れるな。・・・さて、私は仕事に戻る。咲夜も来い。四十六室に行く。」
『またか・・・。全く、貴族の諍いは全てこっちに投げやがって・・・。』
「母上。少々お口が悪くなっております。」
青藍の呆れた声に咲夜の雰囲気が変わる。


『それは大変申し訳ございません。謹んでお役目を果たします故、聞かなかったことにして頂けますか?』
「母上の働き次第ですね。」
『あら、手厳しい我が子だこと。』
ふふ、と貴族らしく笑う咲夜に、白哉も呆れた顔をした。


「遊んでいるな。行くぞ、咲夜。」
『はいはい。青藍、橙晴と茶羅を頼んだぞ。』
「解っています。十四郎殿ならば、安心ですけど。」
『はは。そうだな。じゃ、行くか、白哉。』
「あぁ。」


「お二人ともお気をつけて。」
『任せろ!・・・よし、白哉。朽木家の今日の夕餉には出汁のきいた揚げ出し豆腐があるのだ!早く帰るぞ!私はあれが好きだ。』
「では、定刻で上がれるように働くことだな。」
『解った!頑張る!』


「・・・母上ったら。」
並んで歩く両親の背中を見つめて、青藍は小さく笑う。
「さて、僕も十三番隊に行こうっと。十四郎殿、僕にも稽古をつけてくれるかな。」
青藍はそう言って空を見上げる。


晴れ渡った空は青い。
「今日も平和だなぁ。」
己の母と同じ色の空に微笑んで、青藍は踵を返した。
あっという間に瞬歩を習得して素早さが増した橙晴と茶羅に彼が頭を抱えるのはまた別の話。
今日も尸魂界は平和なのであった。



2017.01.18
リクエストを頂いてから時間が経ってしまい申し訳ありません!
それと、書きながら思ったのですが、もしかして、双子って連載の双子じゃないんですかね・・・?
そうだったらごめんなさい。
先に謝っておきます。



[ prev / next ]
top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -