蒼の瞳、紅の瞳
■ 別室にてB

「あ、こら、お前!何でその体勢から抜け出せるんだよ・・・。」
体をひねってするりと海燕の手から逃れた白哉は、たん、と地面に着地すると、眠る咲夜に近付いた。
彼女の前にしゃがみこんで、その頬をつんつんと突く。
くすぐったそうに身じろいだ咲夜の表情が緩んで、白哉はそれを満足げに眺めた。


「・・・咲夜姉さまは、笑っているのが一番です。」
そんな呟きを零して、白哉は立ち上がる。
「父上。私はもう帰ります。稽古に遅れると、清家が五月蝿いので。」
「ふふ。今日は何の稽古があるんだい?」
「書道と茶道と剣道です。」
「そうか。頑張りなさい。」


「はい。・・・志波海燕。帰るぞ。」
「はいはい。・・・大事なお子さんはちゃんと邸まで送り届けますので。ご安心を。」
「あはは。よろしくお願いします。」


「・・・面白い子だ。」
白哉と海燕を見送って、それまで彼らを観察していた藍染が口を開く。
「そうですか?見ての通り、少々生意気なところもあるのですが。」
「確かに生意気そうなガキやったなぁ。」
「でも、朽木副隊長に似てた!」
ひよ里と白の言葉に蒼純は苦笑する。


「私の息子ですからね。」
「へぇ?そんならあんたも本当はあんな性格なん?」
「さて。そうだったかもしれませんねぇ。」
ふふ、と微笑む蒼純を、リサは胡散臭げに見つめた。


「咲夜。隊主会が終わった・・・よ?」
扉からひょこりと顔を出したのは、春雪である。
眠る咲夜と蒼純の傍に置かれている重箱を見て、笑みを浮かべる。


「もしかして、白哉君、来た?」
「えぇ。お気遣い、ありがとうございます。」
「そうか。本当にいい子だね、あの子は。」
「そう言って頂けると、親としては嬉しいものです。」
蒼純は本当に嬉しそうに言った。


「あはは。子どもの成長というのは、嬉しいものだよねぇ。」
「宗野隊長は、お子さんが居られるのですか?」
藍染の問いに、春雪は苦笑を返す。
「いや。居ないよ。我が子のような存在は、居るけれど。」
「我が子のような存在?」


「そう。これまでずっと成長を見守って来た。本人は、それを知らないだろうけどね。・・・さて、朽木副隊長。咲夜は私が預かるよ。そのお弁当も一緒に。」
春雪はそう言って軽々と咲夜を抱え上げ、風呂敷包みを掴んだ。
体が揺れたはずだが、咲夜の眠りは深いままである。


「目が覚めたら弁当を食べさせて、二、三仕事を熟してもらったら、今日は朽木家に帰らせよう。昼過ぎには帰すことが出来ると思う。」
「解りました。よろしくお願いします。」
「うん。・・・あ、そうそう。矢胴丸副隊長。」
「なんや?」


「隊主会が終わると同時に京楽隊長が姿を消したけど、着いて行かなくてもいいのかい?」
「・・・あのおっさん・・・後でシバいたる・・・。」
春雪の言葉を聞いたリサはそんな物騒な呟きを残して姿を消す。
「言わない方が良かったかな・・・。」


「いつものことですので、気にする必要はありませんよ、宗野隊長。」
「そう?それならいっか。じゃ、私たちはこれで失礼するよ。白哉君にお礼を言っておいてくれるとありがたい。」
「伝えておきます。」


「・・・宗野隊長は、彼女に触れてもいいわけだ?」
二人を見送った藍染の呟きに、蒼純はちらりと視線を向ける。
「彼女がそれを嫌がらないからね。」
「宗野隊長が彼女に選ばれた人、ということかな?」


「ある意味では、彼女は宗野隊長を選んでいる。だからこそ、咲夜は宗野隊長の副官を務めている。」
「君は、宗野隊長が何者か知っているのかな?」
「私などよりも死神歴が長い、ということしか知らない。私が生まれる前から死神をやっているそうだ。」


「へぇ?その彼の、我が子のような存在、とは一体誰のことなのやら。」
「思い当たる人物でも居るのかな。」
「君には居ないのかい?」
またもや始まった冷ややかな攻防に、その場に居る者たちはこそこそと逃げ出す。
廊下に出れば隊長たちがぞろぞろと出て来たらしい。
皆がこれ幸いと己の隊長たちの元へ足を向けたのだった。



2016.10.29
副隊長が集まると始まる、蒼純様と藍染の戦い。
周りの副隊長たちは自分に火の粉が飛んでこない場所で咲夜さんの世話をしながら、それを見守ります。
少年の白哉さんと海燕さんを描くのが楽しかった・・・。
ちなみに白哉さんの見た目は小学校高学年くらいのイメージです。

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