蒼の瞳、紅の瞳
■ 別室にてA

「ねぇねぇ、朽木副隊長とサクは、どんな関係?何でそんなに仲良しなの?」
白に問われて、蒼純は藍染から視線を外す。
「おや、知らないのかい?彼と彼女は、叔父と姪という関係だよ。」
・・・何故君が答える。
蒼純は内心で呟いて、訳知り顔で答えた藍染をちらと見つめるが、彼の微笑みはいつものそれで。


「えぇ!?そうなんだ!ねぇ、二人とも!血が繋がってるんだって、この二人!」
白はひよ里とリサの方を振り向いて言う。
「そうなん?それは初耳や。」
「それにしてはサクと距離感近ない?もしや・・・禁断の愛?」
リサの言葉に、蒼純は苦笑を返す。


「ただの叔父と姪の関係です。兄妹のように育ったのは事実ですが。それに、私には妻と息子が居ますので。」
「へぇ?奥さん、嫌がらへんの?こんな綺麗なんがそばに居て。」
「えぇ。むしろ、居てくれて助かるといつも言っています。咲夜は息子の面倒を見てくれますから。」
にこりと微笑む蒼純を、リサはまじまじと見つめる。


「ふぅん?でも、サクって漣家の当主やろ?その内誰かと結婚するわけや。あんた、サクから離れられるん?相手の男は嫌がると思うで。あんたがそばに居んの。」
「私と距離を取るかどうかを決めるのは、この子です。相手の男でも、私でもありません。・・・この子が離れろというのならば、私は離れますよ。」
言いながら蒼純は眠る咲夜の髪を梳く。


「相手がどんな男でも?」
藍染はどこか楽しげに、試すように問う。
「・・・咲夜は、君の手に負えるような子じゃないよ。この子は君みたいな男を選ばない。」
咲夜を見つめながら、蒼純は言い切る。


「まるで僕が彼女に興味を持っているような言い方だ。」
「違うのかな。事あるごとに彼女と私に絡んでくるのは誰だったか。」
「絡んでいるつもりはないけれど。気に障っているのならば、謝ろう。」
「否定はしないわけだ。」
「まぁ、興味を持っているのは事実だからね。」


「そうか。・・・だが、君では彼女を見つけることは出来ない。」
「どういう意味だい?」
「そのままの意味だよ。この子が何処に居ようと、必ず見つけ出せる相手を、彼女は選ぶだろう。私にはそれが出来るけれど、その相手は私ではないと断言しておく。それから、もう一つだけ断言させてもらうと・・・咲夜に手を出せば、只では済まない。君も気を付けた方がいい。命を無駄に失いたくはないだろう?」
微笑みを消した蒼純に、その場の空気が凍った。


「失礼いたします。こちらに、副隊長の皆様が居られると聞いてやって来たのですが・・・。」
凍った空気など知らぬとばかりに聞こえてきたのは少年特有の高い声。
戸口を見れば、そこにはその表情にあどけなさが残る黒髪の少年が一人。
その手には風呂敷包みを抱えている。


「白哉・・・?」
「父上。咲夜姉さまは・・・眠っておられるのですね。」
軽い足音を立てて、白哉は室内に入ってくる。
眠る咲夜を覗き込んで、安心したような顔をした。


「どうして、ここに・・・?」
首を傾げる蒼純に、白哉もつられたように首を傾げる。
「今朝、宗野隊長がいらっしゃって、咲夜姉さまにお弁当を届けるように、と。」
一体、宗野隊長は何処まで知っているのやら。
白哉の言葉に蒼純は内心で呟く。


「そうか。ありがとう。一人で来た・・・訳ではないようだね。」
「はい。先ほどから扉に隠れている志波海燕と共に来ました。」
蒼純はその言葉に苦笑して、秘密の話でもするように白哉の耳に口元を寄せる。
「引っ張っておいで。」
「解りました。」
大きく頷いた白哉は、風呂敷包みをその辺に置いて外に出て行く。


「・・・あ、こら!何だ!?何すんだよ!」
そんな声が聞こえてきて、海燕を知る者たちは笑う。
「父上がお呼びだ。」
「おいこら。目上の人には敬語を使え。」
「目上の人・・・?」


「そんな疑わしい目で見るなよ。どう見ても目上だろうが。・・・ったく、本当に生意気な奴だな。」
白哉に袖を引っ張られながら、海燕が姿を見せた。
「海燕殿。・・・息子がお世話になったようで。」


「あ、いや、その、俺は、別に・・・。どちらかと言えば、咲夜さんの方が大変というか・・・。」
「あはは。そうでしたね。同期の浮竹隊長の元には良く足を運んでいるようですから。重ねて、お礼申し上げます。」
「いえ。お礼なんかいいっすよ。」


「そうです。志波海燕にお礼なんかいりません。駄々を捏ねて道草を食っているのを引っ張って此処までやって来たのですから。」
白哉にしれっと言われて、海燕は彼の襟首を掴んで持ち上げる。
地面から足が浮いているが、白哉は平然としていた。


「何か言ったか?」
「空耳だ。」
短く答えて、白哉はそっぽを向いた。
「ほう?途中、すっ転びそうになったお前を助けてやったのは誰だったっけなぁ?俺が支えなきゃ、咲夜さんへの弁当が無残な姿になってたぞ?」


「あの程度、自分で何とか出来た。あの時私がわざわざ志波海燕の手を借りたのは、私を助けようとしたのに役立たずになってしまったら、志波海燕が格好悪いからだ。感謝しろ。」
「ほんっとに生意気なガキだな、お前・・・。」
青筋を立てた海燕に睨まれるも、白哉はどこ吹く風。
それを見た蒼純は苦笑するしかない。



2016.10.29
Bに続きます。

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