蒼の瞳、紅の瞳
■ 蒼と藍B

「・・・君、意外と腹黒いよね。」
微笑みながら言う藍染の瞳は、どこか剣呑だ。
「否定はしないけれど、私の腹黒さなど大したことではないよ。」
その剣呑な瞳を気にすることなく、蒼純様もまた微笑む。


にこにこ。
そんな表現が似合う二人の表情なのに、心穏やかにいられないのは何故なのか。
もしかして、蒼純様も藍染の斬魄刀の偽りに気付いているのだろうか。
しかし、鏡花水月の能力は、完全催眠。
蒼純様も、その斬魄刀の解放を目にしたことがあるはず。
つまり、すでに鏡花水月の虜となっている訳で・・・。
それなのにこの態度ということは・・・。


『・・・蒼純様は、藍染が余程嫌いなのですね。』
思わず呟いた言葉に、二人の視線が向けられる。
「咲夜・・・。そう言うことを言うのは、やめてくれるかい・・・。」
「おや、あながち間違ってはいないだろう?」
「・・・そうかもしれないね。君のその無駄によく回る口が、憎たらしいよ。」
「それはお互い様というのではないかな。」


『・・・二人とも、それ以上露骨にやれば隊士たちに感付かれますよ。』
チラリと隊士たちを見ながら言えば、二人は不穏な雰囲気をあっという間に引っ込めた。
「ふふ。まぁ、そう言うことだから、私たちはこの辺で失礼するよ。我が息子が首を長くして待っているものでね。」
「そうだね。すぐに帰ってあげるといい。漣君も、また。明後日の副隊長会議にはちゃんと出席するように。」
・・・藍染が居ないなら、行ってもいいんだがなぁ。


「こら、咲夜。君が来ないと私までお叱りを受けるのだからね?解っているのかい?」
思考を読み取られたように蒼純様にじろりと睨まれた。
『・・・はい。ちゃんと行きます。』
「よろしい。・・・では、また。」
「あぁ。また。」


連れ立って去っていく二人を、藍染は観察するように見つめる。
・・・面白い二人だ。
漣家と、朽木家か・・・。
調べてみる価値はありそうだ。


特に、漣咲夜。
朽木蒼純が、いや、あの朽木家が彼女を守っているというのは、周知の事実。
血縁関係があるにしても、度が過ぎている。
それに、今日の任務。
本来ならば、彼女一人で十分だったはずだ。
それだけの能力があることをあの総隊長が知らぬはずもない。
それなのに、わざわざ彼女と僕を組ませた理由はなんだったのだろう。


「・・・触れてはいけない、か。」
だが、触れてはいけないものに程、惹かれるのも事実。
漣家に代々伝わるという斬魄刀、森羅。
その始解を目にした者たちは口々に言う。
あの紅色の瞳は、思い出すだけでも恐ろしい、と。
そして、その能力を問えば、返って来る答えはすべて違う。


鏡花水月と同じ、若しくはそれ以上の能力があるのかもしれない。
それこそ、神と同等の力を。
彼女ならば有り得ないでもないと思って、藍染は自分のその思考に苦笑する。
「・・・まぁ、どちらにしろ、興味深い。」
藍染のそんな呟きは、誰にも聞かれることなく消えていった。



2016.09.14
私の個人的な意見ですが、蒼純様と藍染は気が合わないような気がします。
蒼純様が咲夜さんを藍染から引き離したのは、条件反射です。
霊妃がそのように仕組んだのだと思われます。
もちろん、大切な妹分をその辺の男に渡したくはない、という蒼純様の個人的な感情もあることでしょう。

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