蒼の瞳、紅の瞳
■ 父上が羽織になった日B

「ただいまー!!!」
「帰ったぞ。」
苦笑しつつどうしたものかと三人で考えていると、そんな声と共に咲夜と浮竹が帰ってきたらしい。
「ん?どうしたのだ・・・?」


『は、ははうえ!!』
咲夜に気が付いた青藍は、ルキアの腕を離れて咲夜に飛びつく。
『ちちうえが、はおりに!!どうしよう!ははうえ、かなしい?』
何やら必死な青藍に、咲夜と浮竹は目をぱちくりとさせる。


「白哉が、何だって?」
『めをあけたら、ちちうえが、はおりになって、いなくなっちゃった!』
居なくなった?
咲夜は霊圧を探る。
すると白哉の霊圧がこちらに向かってきていることに気付く。


そして、握られた羽織から何となく事情を理解して、安心させるように青藍を撫でる。
「大丈夫だ、青藍。そういう時はな、「てしえかをえうちち」だ!」
『てし・・・?』
「てしえかをえうちち。」
『てしえかをえうちち?』


「そうだ。そう言い続ければ、白哉が戻ってくるぞ。」
『ほんとう?』
「あぁ。本当だとも。なぁ、浮竹?」
「あ、あぁ。そうだな。そうすれば白哉は帰ってくるぞ!」


なるほど。
逆から読めば、ちちうえをかえして。
しかし漣、ちょっと適当すぎやしないか・・・?
浮竹は内心で呟きながらも青藍に笑みを見せる。


「・・・咲夜姉さまも、流石というか、なんというか。」
「そうだな・・・。青藍は、あの二人の子どもなんだよな・・・。一体どうなることやら。」
「あはは。将来が楽しみだねぇ。」
咲夜の教えた呪文を繰り返し始めた青藍を見ながら、三人は苦笑する。


『てしえかをえうちち。てしえかをえうちち。』
そうとは知らず、青藍は羽織を握りしめながら必死に呪文を繰り返す。
「そうそう。てしえかをえうちち。」
「そうだぞ。てしえかをえうちち、だ。」
咲夜と浮竹は呪文を繰り返す青藍を微笑ましげに見つめる。


それからすぐに、白哉が姿を見せた。
呪文を必死に唱えている青藍を見て、白哉は静かに青藍に近付く。
それに気が付いたのか、青藍は後ろを振り向いた。
そして目を大きく見開くと、見る見るうちにその瞳に涙が溢れる。


『・・・ちちうえー!!!』
涙が零れると同時に、握っていた羽織をその辺に捨てて、白哉に飛びついた。
白哉はそんな青藍を抱き上げて、小さく微笑む。
「どうしたのだ?」
『ちちうえが、はおりに、なって、ははうえが、かなしくなる・・・。ぼくもかなしい。』


「そうか。それは悪いことをした。」
『もう、はおりにならない?』
「あぁ。そなたの父は、羽織ではないのだろう?」
その問いに頷いた青藍に、白哉は満足げに我が子を抱きしめたのだった。


「・・・ふ、ふふ。あはは!!!!」
そのまま安心して眠った青藍を見守りながら、睦月から事の顛末を聞いた咲夜は涙目になりながら笑い出す。
「そ、それで、青藍は、こんなに、泣かされたのか!!・・・く、はは!!もう、だめだ。びゃ、白哉が、面白すぎる!!かわ、可愛いぞ、白哉!」
腹を抱えて笑う咲夜に、白哉は青藍を抱きしめながら拗ねたような視線を送る。


「はは。つまり、羽織が本体だと言われて、悔しかったわけだ。」
「あはは。まぁ、それは悔しいよねぇ。可愛い息子に、羽織を指して、父上と言われちゃあねぇ。」
浮竹と京楽もまた笑った。


「いや、そうだとしても、もうちょっとこう、他にあったでしょう・・・。」
「ははは・・・。」
そんな彼らに、睦月とルキアは青藍に同情の視線を送ったのだった。
そしてその後、白哉は青藍の手を引いて歩くようになったのである。



2016.07.01
白哉さんは青藍が可愛いのです。
青藍も青藍で、白哉さんに泣かされても白哉さんが大好き。
死神の皆さんは、そんな二人を、時折ハラハラとしながら微笑ましげに見守ります。

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -