蒼の瞳、紅の瞳
■ 全身で愛を語る

「ちょ、白哉!?何だ!?どうした!?」
咲夜は引きずられるように、白哉に手を引かれていた。
白哉は騒ぐ咲夜を気にすることなく、人払いをして六番隊の隊主室へと足を踏み入れる。
咲夜も中に引き入れて、隊主室の扉を閉めた。


白哉はそのまま縫い止めるように咲夜を扉に押し付ける。
腕を掴まれ、扉に押し付けられて、咲夜は逃げるに逃げられない。
目の前の白哉は何か怒っているようである。
その理由が思い当たらず、咲夜は内心で首を傾げた。


・・・さっきまでは、十番隊に居た。
何時ものように冬獅郎を抱きしめて、頬ずりをしたところに、白哉がやってきて・・・。
・・・ん?
そのせいか?
「・・・んむ!?」
そこまで思い至った咲夜だが、突然口付けられて、そんな声を上げる。


「ん、ちょ、ま、て・・・。んあ、びゃ・・・くや。」
何とか弁明をしようと、白哉の口付けから逃れようとするも、逃がさないと言うように、白哉の舌が咲夜の口内を犯す。
もがいても縫いとめられた腕はびくともしない。
敵わぬと悟った咲夜は力を抜いて白哉の気が済むまでされるがままになる。


「・・・はぁ・・・。」
漸く口付けから解放された咲夜は、息を切らしながらも白哉を見る。
射るような強い視線に、小さく笑う。
そして、彼の肩に額を寄せた。


「・・・何を笑っている。」
それが気に入らないのか、白哉の低い声が聞こえてくる。
そんな白哉に再び笑って、咲夜は顔を上げた。
白哉の瞳を真っ直ぐに見つめる。


「・・・君が、全身で、愛していると、伝えてくるから。嬉しくて。嫉妬したのか?」
咲夜の言葉に、白哉の瞳から怒りが消えていき、拗ねたような光が宿る。
「ふふ。そうか。なぁ、白哉。手を放してくれ。君に触れたい。」
柔らかく微笑みながら言われて、白哉は手を緩める。
咲夜はするりと手を抜け出して、そのまま白哉の頬に手を伸ばした。


「可愛いな。そんなに、私を愛しているのか。」
言いながら、愛しげに見つめる。
するりと頬を撫でて、白哉の頭を引き寄せる。
白哉は引き寄せられるままに身を屈めた。


視線の高さが同じになって、唇が触れ合うぐらいに近くなる。
咲夜は悪戯でもするように、軽く唇を触れ合わせた。
「私が、こうするのは、白哉だけだ。さっきのを許すのも、白哉だけ。私が愛する男は、朽木白哉ただ一人だ。愛しているよ、白哉。」
微笑みながら言われて、白哉はため息を吐く。


「それならば、いい加減、日番谷隊長に抱き着くのはやめろ。他の者に抱き着くのも止めろ。簡単に触れさせるな。」
言いながら白哉は咲夜の首筋に擦り寄る。
「それは・・・難しいな。冬獅郎は私のぬいぐるみなのだ。中々手放しがたい・・・。」
咲夜は本気で悩む。
そんな咲夜に白哉はため息を吐いた。


「そなたは私をどうしたいのだ・・・。機嫌を取ったと思えば、すぐにそうやって・・・。」
拗ねたように言う白哉に咲夜は笑って彼の頭を撫でる。
「それでも白哉は私の一番なのだがなぁ。たくさんあるうちの一番なのだ。一つしかない一番より、一番だろう?」


「何を言っているのだ・・・。」
「あはは。難しいな。想いを伝えるというのは。君が私の一番であることは間違いないのに。」
咲夜は困ったように笑う。


「・・・愛している。言葉では足りないくらいに。この愛をどう伝えようかと、悩むくらいに、私は、白哉を愛している。それは、本当だ。」
「私とて、そなたを愛している。どれほど言葉を尽くしても、伝えきれぬほどに。」
「うん。知っているよ。君の瞳は、私のことが愛しいと、伝えてくれる。君の手が、愛しげに私に触れる。君は、全身で私に愛を伝えてくれる。」
咲夜はそう言って白哉の髪に顔を埋めた。


「・・・そなたは、解り辛いのだ。」
「そうか?」
「いつまでも私を弟のように・・・。」
「ふふ。そう拗ねるな。弟に口付けなどするものか。私の全てを奪っているくせに、何故そう思うのだ。私は全部で君を受け止めているのに。君が私を全部で受け止めてくれているように。」


「本当か?」
不安げな声が聞こえてきて、咲夜は笑う。
「もちろん。愛しているよ。何度だって伝えよう。愛している。」
咲夜は言い聞かせるように言う。


「私はきっと、君になら、何をされてもいいのだと思う。君が私を愛していてくれるのなら。」
その言葉に白哉は顔を上げる。
「では、好きにさせてもらおう。咲夜から、私を求めさせてやる。」
そう言って妖艶に笑った。
その表情に咲夜はぞくりとする。


「ず、狡いぞ・・・。」
顔を赤くしてそう言った咲夜に、白哉は満足げに笑った。
それから咲夜を抱き上げて、邸へと向かう。
後に、白哉の不在に気が付いた恋次の叫び声が、六番隊舎に響いたのだった。



2016.06.25
二人の想いが通じ合ってからの話。
白哉さんの嫉妬すらも全部受け止めてしまう咲夜さん。
子ども扱いをしているわけではないのですが、白哉さんが可愛くて仕方がないのです。
でも日番谷さんのこともつい可愛がってしまうので、このようなことは日常茶飯事だと思われます。
お蔭で恋次はいつも大変。

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