蒼の瞳、紅の瞳
■ 25.恩師との再会


咲夜は一度隊舎に戻ろうと、十三番隊の方へ歩いていた。
しかし、八番隊舎に通りかかったところで、彼女は突然誰かに捕まり、脇に抱えられた。
『うわ!?』


そしてなぜか運ばれている。
おそらく瞬歩を使って。
『離せ!!』
そう言ってじたばたと暴れてみるも効果はない。


「こらこら、落ちるって。ちょっと落ち着いてよ、咲ちゃん。僕だよ、僕。」
『京楽!?何をしているんだい?』
顔を上に向けるとそこには同期の姿があった。


「いやぁ、咲ちゃん。君、大事な人に挨拶がまだだろう?山じいがお呼びだよ。」
そういいつつ、京楽は伝令神機を取り出して電話をかけ始める。


「あ、浮竹かい?咲ちゃん捕まえたから山じいのところまで来てくれ。じゃあ。」
それだけ言って、電話を切ってしまった。
『げ。』


「山じいは気付いていたみたいだよ。咲ちゃんが帰ってきていることに。で、昨日は一日中首を長ぁくして待っていたのに君が来ないから、しびれを切らしたみたい。それで僕らに連れて来いって言ってきたんだ。」


『まったく、爺さんなんだから気長に待てばいいものを。』
「あはは。そうだね。っと。さぁ、着いたよ。」
あっという間に一番隊に着いてしまった。
しかし、京楽は私を離さない。


京楽め。
私が逃げようと思って居たことに気付いているな。
『はぁ。気が重い。私一番隊舎って嫌いなんだ。堅苦しくって。まるで山じいみたいなんだもの。』


「まぁまぁ、そういうなよ。先生も君のことを気にかけていたのだから。」
浮竹が音もなく現れて、そう言った。


『大体、いつ引退するんだ。あの爺さんは。』
「聞こえておるぞ。早う入らんか、漣咲夜。」
隊主室の前で文句を言っていたら中から声がかかった。


『はいはい、失礼しますよっと。』
京楽は隊主室に入ると同時に私を離した。


『やぁ、久しぶりだね。山じい。』
「全く百年以上姿を見せないと思ったら、突然現れおって。その上、師への挨拶もないとは。儂はそのようにお主を鍛えた覚えはないぞ。」


『あはは。いやぁ、四十六室がなかなか諦めてくれなくてさぁ。あの日以来、毎日のように追っ手を放ってきたんだから。』
「当然じゃ。力を欲する者ならば、喉から手が出るほど欲しいじゃろうて。」


『そうなんだよねぇ。私はそんなものに興味はないし、誰かの道具になる気もないっていうのにねぇ。』
「咲ちゃんらしいねぇ。」
京楽がいう。


『それに一番大変だったのは白哉の放った追手だよ。朽木家お抱えの彼らは刑軍の上を行くようだよ。ま、全員縛り上げて朽木家の門の前に捨ててきたけどね。』
「漣・・・お前ってやつは本当に・・・。」
浮竹が呆れたようにつぶやく。


「して、何故戻った。」
『真実を知るために。あの日のあの出来事は何故起こったのか。』
「知って何とする?」
『全てに蹴りを付ける。』
咲夜は真っ直ぐにその澄んだ瞳を師に向けてそういった。


「そうかの。ならば儂は何も言うまい。」
咲夜の瞳を見て、元柳斎はそう言った。
『だから私は探しているのだ。』
「何をだい?」


『・・・我が父、漣鏡夜だ。』
そう答えた咲夜に浮竹が問う。
「父を?お前の父は亡くなっているのではないのか?」
『・・・そうだな。先生と、君たちには話しておこう。』


私の、漣家の、秘密を。
私が何故姿を隠したのか。
あの日、宗野隊長が殺されるまでの間に、私に何があったのか。
話せば、きっと、彼らを巻き込んでしまう。


でも、私は決めたのだ。
独りで抱えるべきでないことに気が付いたから。
だから、私の話を聞いて貰おう。
この優しい友人たちと、強い恩師に。



2016.03.11 帰還編 完
〜秘密編に続く〜

以降、更新が遅くなると思いますがお付き合いいただけると幸いです。

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