蒼の瞳、紅の瞳
■ 31.サボり魔

「やぁ、咲ちゃん。久しぶりだねぇ。美味しいお酒があるんだけど、呑まないかい?」
ひょっこりと現れた京楽は酒瓶を片手にそう言った。
『京楽。』
咲夜は笑いを堪えながら彼の名を呼んだ。


「・・・予想通りだな。」
「ははは。そうだな。」
「そのようですね。皆さん、京楽隊長のことをよく解っておられる。」
白哉に浮竹と蓮も同意した。


「あれぇ?みんな、どうしちゃったの?」
『いや、なんでもないぞ。京楽は京楽だなぁ、と。』
「そうだな。これが京楽なんだよな。」
「え?何が?」
咲夜と浮竹に京楽は首を傾げた。


「京楽隊長、後ろに気を付けた方が良さそうですよ。」
「見つけましたよ、隊長。」
突然聞こえた言葉に京楽は後ろを振り向いた。


「ふご!?」
その瞬間、京楽の顔面に蹴りが入れられた。
「京・楽・隊・長?」
蹴りをいれた本人である晴は、満面の笑みで彼の名を呼んだ。
その瞳は決して笑っていないが。


「は、はる、ちゃん。・・・痛いよ。」
「この程度で何を言っているんですか。さぁ、帰りますよ。その酒瓶はここに置いて行ってください。」
「僕は咲ちゃんとお酒を呑むの。」


「ふふふ。京楽隊長?隊長が、何回サボっていたか、私知っているんですよ?七緒さんには数を少なめに申告しているのは私なんですよ?その分ちゃんと仕事をしてくださらないと。すべてを七緒さんにお伝えしてもいいのですよ?」
晴の言葉に京楽は顔を引きつらせる。


「・・・えへ。」
言葉を詰まらせた京楽が取り繕うようにへらりと笑った。
「何です?見ても誰も得しない顔になっていますよ。それに笑顔ひとつで許されるなんて思っていませんよね?浮竹隊長の笑顔は価値がありすぎて値段がつけられないくらいですが、京楽隊長の笑顔は何の価値もなくて値段がつけられないのですよ?」


「確かにそうですね。」
青藍はしれっと同意した。
『あはは!』
咲夜は大笑いである。
白哉も莫迦を見る目で京楽を見るばかりだ。


「・・・晴ちゃん、それちょっと酷すぎない?青藍も。咲ちゃんもなんで笑っているのさ・・・。」
京楽は涙目である。
『いや、すまない・・・ふ、くくく・・・。』
謝りながらも、咲夜は笑いを止められない。


「このくらいでなに涙目になって居るんですか。私は別にいいんですよ?隊長がサボっている間どこで何をしていたか、七緒さんにお伝えしても。今まで伝えなかったのは京楽隊長のためを思ってのことだったのですけれど、その必要はなかったようですね。」


「・・・どういうこと?」
「隊長が仕事中に隠れてお酒を呑んでいたことも、隊士へのセクハラも、私はすべて知っているということです。あぁ、それから、花街で女性に囲まれていたことも、ですけど。」


「いや、それは、誤解じゃないかなぁ。」
京楽の表情がさらに引きつったものになる。
「・・・京楽、最初の二つも問題だが、三つ目は駄目だろう。」
浮竹が呆れたように言った。


「いやぁ、つい、ね。だって、ほら、道端で泣いてる女の子を見たら放っておけないでしょ?そしたら、お店の子だったみたいでね・・・。」
言い訳を述べる京楽に、冷たい視線が向けられる。
浮竹は京楽の隣で頭を抱えた。
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