■ 27.目指すのは父上
稽古をはじめて数刻。
清家から浮竹たちに声が掛かった。
「浮竹様、南雲様。昼餉の用意をしておりますので、どうぞお召し上がりください。青藍様、橙晴様、茶羅様もご一緒に。白哉様と咲夜様も呼んで参りますので。」
「あぁ、いつもありがとう。」
「礼を言うのはこちらの方でございます。白哉様に続き青藍様までお世話になって居るようで。」
「ははは。俺は好きでやっているからいいんだ。それに、漣の頼みだからな。引き受けないわけにはいかないだろう。」
浮竹は悪戯っぽく笑う。
「ほほ。左様でございますか。では、私はこれで。ゆっくりして行かれますよう。」
「あぁ。お気遣い感謝する。」
広間に着くと、昼餉が運ばれてきた。
白哉と咲夜はすでに席についている。
子どもたちもいそいそと自分の席に着いた。
浮竹と蓮もまた着席する。
『浮竹に蓮。子供たちはどうだ?』
「あぁ、青藍は漣に似たタイプだな。性格は白哉よりのようだが。」
『ふふ。そうか。』
咲夜は嬉しそうに微笑む。
「橙晴殿と茶羅殿は未知数ですね。ただ、二人とも霊圧の質が良いのは解ります。」
『それは私と白哉の子どもだからな。』
咲夜は得意げに笑った。
「十四郎殿は母上の同期なのですよね?」
箸を進めつつ、青藍が聞いた。
「あぁ。漣は強いんだぞ。ものすごく。」
「「母上、強いの?」」
双子はそろって首を傾げる。
「そうだ。」
「「どのくらい?」」
「俺なんかよりももっとだ。」
「父上とどちらが強いのですか?」
「あはは。そうだなぁ。普通に戦えば、漣の方が強いだろうな。」
「そうだな。」
白哉が静かに言った。
「「じゃあ、母上が一番強いの?」」
「まぁ、そういうことになるな。」
「・・・そうですか。では、僕は父上を目指します。」
何かを考えていたらしい青藍は言った。
「どうしてだい?」
浮竹が首を傾げる。
「だって、父上が居るから、母上は強いのでしょう?」
何でもないことのように青藍は言った。
『どうしてそう思う?』
「確かに母上の力は父上よりも上なのでしょう。ですが、母上は精神的には強くないでしょう?むしろ、弱い。それを支えているのは父上です。だから僕は父上のような、誰かを支えられる人になりたい。」
そう言い放った青藍に、一同は目を丸くした。
そして、沈黙があった後に咲夜と浮竹が笑い出した。
そんな二人を青藍は不思議そうに見つめている。
「僕、何かおかしなことを言いましたか?」
「・・・さすが、お二人の子ですねぇ。」
蓮が感心したように言った。
「見抜かれているぞ、漣。」
笑いを堪えつつ、浮竹が言う。
『あはは。この子は大物かもしれない。よかったな、白哉。』
「そうだな。青藍、それはなかなか大変だぞ。」
そういいつつも白哉は優しいまなざしで青藍を見つめている。
「父上を見ていればわかります。」
「解っているならよい。精進せよ。」
「はい!」
「橙晴も母上を支えるよ!」
「じゃあ茶羅は父上支えるー!」
話を理解していたらしい双子も口々に言った。
茶羅の言葉に白哉は表情をさらに柔らかくする。
やはり娘は可愛いらしい。
『そうか。頼もしい子供たちだな。・・・茶羅が嫁に行くときなど白哉は泣くんじゃないか?』
咲夜は意地悪く笑う。
「・・・泣きはせぬ。」
拗ねたように白哉は言った。
「ははは。茶羅の相手は大変だろうなぁ。」
浮竹までも面白そうに笑う。
「兄こそ泣くのではないか?」
「はは。そうだな。」
「・・・。」
反撃をさらりと流されて、白哉は面白くなさそうに黙り込む。
『あはは。さすが浮竹だ。』
それを見ていた咲夜は笑い出した。
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