蒼の瞳、紅の瞳
■ 22.対の者

「ちょっと、咲ちゃん、僕らにも説明してよ・・・。なに二人でいちゃついてるの。」
その様子を見ていた京楽が呆れたように言った。
『あはは。そうだったな。』
咲夜はそう言って白哉から離れて座る。
白哉もまた座った。


「それにしても・・・漣家とは一体何なんだ?霊妃は漣家の地下に居ると言っていたが。大霊書回廊にもそんな資料はなかったぞ。」
『あはは。霊妃は霊王によって隠されているからな。山じいすらその存在を知らぬ。最初から居なかったものとされているのだろう。そして漣家の女の浄化の力は霊妃によって与えられたものだ。漣家が何故他の貴族たちと関わらないのか。その理由は霊妃にある。』


「霊王と対の者だと言っていた。」
『そうだな。霊王に何かあれば、世界が崩れる。それを止めるために霊妃が存在する。』
「霊王に何かあれば、自分が霊王になると言っていたのはそういうことか。」
「では、霊妃は霊王と同等の力を持つということですか?」
『そうだな。同等以上だ。もし、霊王の力が暴走するようなことがあればそれを止めるのも霊妃の役目だから。』


「霊妃が暴走することはないのか?」
『ないとは言えないが・・・。漣家に女が生まれる限り、霊妃が暴走することはないだろう。彼女は漣家の舞を見るのが好きなのだ。あの舞を続けている限り、滅多なことでは暴走しない。もちろん暴走した場合の対処法もある。まぁ、それはそれで大変なのだが。』


「それを利用させないために、貴族との関わりを避けていたという訳か。」
『そうだ。大貴族とだけ関わることが出来たのは、大貴族は霊王の恐ろしさを知っているからだ。朽木家にも霊王についての書物があるのではないか?』
「・・・あるな。」


『そしてそこには霊王の異様さと恐ろしさばかりが綴られているのではないか?』
「あぁ。確かにそうだった。」
白哉は思い出すように頷いた。
「なるほどね。漣家は霊王の切り札っていう訳だ。」
「本当にお前はいろんなものを抱えているんだな・・・。」


『まぁ、これは漣家に女として生まれてしまったのだから仕方がないな。剣の巫女とは別件だ。』
「俺は漣家が怖いぞ・・・。」
そう言った浮竹に京楽と睦月が同意する。


「そう言えば父上を知っている様子だった。」
『蒼純様は霊妃とよく話していたようだからな。といっても私が朽木家に預けられていた頃の話だが。まだ私は幼かったから、霊妃も降りやすかったのだと思う。』
「では、父上が言っていた綺麗で恐ろしい人というのは霊妃か。」


『そうかもしれないな。蒼純様は霊妃のお気に入りだった。何度やっても私と霊妃を必ず見分けたから。』
「そんなに頻繁に降りてきていたのか?」
『そうだな。昔はそうだった。そう言えば私が霊術院に入ってからは降りてきていないな・・・。』


「この前降りてきたのはそなたが牢につながれていた時だと言っていた。」
『あぁ、そうだな。そうかもしれない。あの時、私は自我を失って、暴れていたからな。霊妃が降りてきたお蔭で落ち着いたのだ。といっても強制的に眠らされたのだが。・・・そうか、あれは霊妃に助けられたのだな。私はそこまで追い詰められていた・・・。』


「咲夜・・・。」
『大丈夫だ。そう心配するな。私には白哉が居るし、浮竹や京楽やルキアや睦月が居る。青藍だって居るしな。』
咲夜はそう言って笑う。
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