蒼の瞳、紅の瞳
■ 21.巫女の目覚め

『ほう。愛し子は剣の巫女と草薙の秘術を手にしているのか。まったく、恐ろしいのう。』
その言葉とは裏腹に霊妃は愉しげに微笑む。
「睦月はついでだ。」


「ついでって・・・。酷くないですか、ご当主。」
睦月は若干落ち込んだ様子である。
『そなたならば、それらを手にしても大丈夫じゃろ。もし悪用することがあれば、妾はそなたらを罰せねばならぬからの。』


「私が咲夜を悪用などするものか。」
『そうかの。それならば良いのじゃ。妾もそのようなことはしたくない。・・・さて。妾はそろそろ帰る。咲夜が目覚めるようじゃ。愛し子よ。咲夜を頼んだぞ。』
「あぁ。」
白哉の返事をきいて満足そうに微笑むと、霊妃は目を閉じた。


そして再びゆっくりと目が開けられる。
その瞳はいつもの咲夜の空色の瞳だった。
『あれ?』
それをみた白哉は咲夜を抱きしめた。


『白哉?どうしたんだい?』
そう声を発した咲夜を見て、その場にいた全員が脱力する。
「咲夜・・・。」
『白哉?みんなもどうしたんだ?』
咲夜は白哉の腕の中で首を傾げている。


『あれ、でもこの感じは・・・もしかして霊妃が降りてきたのか?』
「あぁ。」
咲夜の問いに白哉は漸く咲夜を開放する。

「体は大丈夫なのだな?」
『うん。怖がらせたか。すまない。』
「霊妃が怖かったわけではない。」
「いや、俺は怖かったぞ。」
「僕も。」
「俺も。」
「・・・私もです。」


『ふふ。すまない。また心配をかけたようだな。ちゃんと戻ってきたから安心してくれ。』
咲夜はそう言って白哉の頬に手を伸ばす。
白哉は頬に当てられた手に自分の手を重ねた。


『それにしても白哉は霊妃が恐ろしくないのか。道理で私を恐れないわけだ。』
咲夜はそう言ってほほ笑む。
「私は咲夜を怖いと思ったことはない。霊妃も恐ろしいとは感じなかった。」
『そうか。だから、君なんだろうな・・・。』
その言葉に白哉は首を傾げる。


「霊妃は私を愛し子と言っていたが・・・。」
『愛し子とは、霊妃の加護を受けた者。だが、その者がいつの時代に生まれ、何処に居るのかは誰も知らない。加護を与える霊妃すら、それを知ることは叶わないのだそうだ。』
「それとどういう関係があるのだ?」


『だから君は私も霊妃も恐れないのだ。赤子が自分の母を怖がることがないように。』
「私はそなたの赤子ではないぞ・・・。」
白哉は不満げに言った。
『あはは。そうだな。君は私が愛する夫だ。そう拗ねるな。』
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