蒼の瞳、紅の瞳
■ 20.魂留め

「浮竹さん、薬を持ってきましたよ。」
突然外から声が掛かる。
「あ、あぁ。ありがとう。入ってくれ。」
「はいはい。失礼します。」


そういって入ってきたのは、睦月である。
しかし、中に入った瞬間、睦月は青ざめて動きを止めた。
「睦月?どうしたのだ?」
ルキアが心配そうに声を掛ける。


『妾のせいであろう。』
霊妃はそう言って先ほどと同じように彼の額に手を当てる。
『これでいくらかは楽じゃろう。』
「咲夜、さん、じゃない・・・。」
睦月が咲夜を見て声を絞り出す。


『よほど妾が怖いと見える。まぁ、普通の反応じゃの。』
怯える睦月をみて、霊妃は何やら楽しそうである。
「妾?えっと・・・ご当主。これは一体?」
戸惑ったように睦月が白哉に問う。


「体は咲夜だが、中身は霊妃だ。」
「は?」
白哉の説明に睦月は首を傾げるだけである。
「白哉、もう少し丁寧に説明してやれよ・・・。」
浮竹は呆れたようにそう言って、睦月にこの状況を説明した。


「・・・なるほど。理解しがたいことが起こったということはわかりました。」
『その髪の色に瞳の色。そなた、草薙の者であろう?』
それまで睦月を観察するように見つめていた霊妃が口を開いた。
「はぁ、そうですが。」


『それに睦月といえば、草薙の中で最も優れた者が名乗ることが出来る名じゃ。一族の長か。』
「いえ。俺は違いますよ。」
『その胸に刻まれている文様は長に刻まれるものだろう。』
「・・・そこまで見えているんですね。長だった、というのが正しいです。」


『では、魂留めが出来るのじゃな?』
魂留めという言葉をきいて睦月が青ざめる。
「何故それを・・・。」
『妾が何者かという話を聞いていなかったのか?これだけ長く生きていれば、それなりの知識は蓄えられる。最近はほとんど眠りについていたので最近の出来事には疎いがの。』


「魂留めとは一体何なのですか?」
ルキアが霊妃に問うた。
『死んだ魂をこの世界に留めておくのじゃ。魂魄は現世と尸魂界を廻っているが、魂留めによって、留められた魂はその流れに乗ることなく、術者の元に留まる。そして、その魂魄に体を与えれば、その者は生き返る。』


「それが、草薙の秘術なのか?」
「・・・はい。」
白哉の問いに睦月は項垂れるように頷いた。


「みなさん、このことは誰にも話さないでください。草薙の一族は、その秘術が原因で迫害されてきたこともあるのです。だから、草薙の一族は一つの場所に留まることなく、あちらこちらへと移動をしながら生活をしている。」
『確かにそのようなこともあったの。』


「知られるわけには、いかないのです。この術は世の理に反します。」
睦月は下を向いたままそう呟いた。
「睦月、顔を上げろ。そう心配するな。私は誰にも話さない。」
「ルキア・・・。」
ルキアの言葉に睦月は顔を上げた。


「ははは。そうだぞ。俺だって誰にも話さない。」
「僕もだよ。こんな話が広まってしまったら、世界の均衡が崩れてしまう。」
「睦月、誰に頼まれても、その術は使うなよ。」
「はい。ありがとうございます。」
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