蒼の瞳、紅の瞳
■ 18.愛し子

『咲夜が、子を産んだ・・・?一体誰の子じゃ?』
「私と咲夜の子だが?」
『そなたの?・・・・そなた愛し子か?』
霊妃はそう言って、白哉に近付く。


「愛し子?」
『そなた、妾が怖いか?恐ろしいと感じるか?』
「怖くなどない。恐ろしさも、感じない。」
「本当かい!?」
そう言い切った白哉に、京楽は驚きの声を上げる。


「兄は怖いのか?」
白哉は不思議そうに言った。
「目が合っただけで動けなくなるくらいにはね。浮竹たちもそうだろう?」
「あぁ。」
「はい。」


『普通は妾を恐れる。特に咲夜は妾に近い。咲夜が近づくと、赤子が泣いたり、子どもが逃げたりしなかったかの?大人も咲夜にはあまり近づかなかったのではないか?』
「確かにそんなことを言っていたが・・・。」
「じゃあ、僕らが咲ちゃんを怖いと思うことがあるのは、君のせいなのかい?」


『そうじゃ。妾は恐れられる。』
「何故兄様は平気なのでしょうか?」
『これが愛し子だからじゃ。予言があったが、咲夜の代だったか・・・。』
「予言、とは?」


『愛し子が現れたとき、剣の巫女は途絶える。そういう予言じゃ。』
「剣の巫女が途絶える?では、咲夜が最後の剣の巫女なのか?」
『そのようじゃの。剣の巫女の力が必要なくなったという証じゃ。』
「そもそも剣の巫女はなぜ生まれたのだ?」


『はるか昔。この世界に初めて斬魄刀が生まれた。それは、中々手に負えぬ代物でな。それを鎮めた者が居たのじゃ。それが剣の巫女の始まりじゃ。その者は妾が降りる、漣家の女であった。それから、剣の巫女は漣家にしか生まれぬようになった。なぜかは妾も解らぬ。妾が降りることのできる血筋であるからなのか、妾が降りたことによって漣の者に何か変化があったのか、それともそれ以外に理由があるのか。』


「では、剣の巫女が必要なくなったというのは?」
『巫女の力を借りずとも斬魄刀を鎮めることが出来るようになったということじゃろう。死神が生まれ、斬魄刀を扱う術を身に着けた。斬魄刀を鎮めるのは、巫女ではなく死神になったのじゃ。』


「剣の巫女は森羅が選ぶと言っていたが、森羅を壊したことと何か関係があるのか?」
『まったく関係がないとは言えないじゃろうな。森羅は初代剣の巫女の亡骸から出てきたものだ。初代が何かしたのかもしれぬ。』


「兄はずっと巫女に憑いている訳ではないのか?」
『普段は地下深くで眠っておる。漣家の地下には神殿があるのだ。妾の本体はそこにある。それに、普通の器では私が降りただけで相当な消耗をするからの。まぁ、咲夜の器は大きく強いからそんなことはないが。そなたらとこうして話が出来るのだからな。』
霊妃は未だすやすやと眠る青藍を覗き込みながら言った。
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