蒼の瞳、紅の瞳
■ 17.右腕

『ふむ。やはり咲夜の器は丈夫じゃの。それにしても・・・妾の目を見ても恐怖しないとは、そなたこそ何者じゃ?いや、その顔・・・見覚えがあるの。』
少しの間思案した後、思い出したような表情になる。
『そなた、朽木の縁者か。』
「そうだが?」


『ほう。そうか。なるほどな。蒼純は元気かの?』
「我が父はすでに亡くなっている。」
白哉の言葉に彼女は目を丸くした。
『・・・そうか。蒼純は死んだのか。あれも妾と咲夜を見分けた男であった・・・。だが、妾を恐れる者だった。それでもあれは妾のお気に入りだったのだがなぁ。死んでしまったか。』


「それで、咲夜をどうした。」
『心配することはない。少し眠っているだけじゃ。この器ならば、妾が降りても害はない。』
「何故、今降りてきたのだ。」


『気まぐれじゃ。大した意味はない。』
そういって、再び部屋をぐるりと見回す。
『おや、そなた霊王の右腕を持つ者か。』
彼女は浮竹に目を向けた。
しかし、浮竹は動けないようである。


『あぁ、すまぬ。これでは話せぬか。少し待て。』
そう言うと、彼女は浮竹の額に手を当てた。
『これでどうじゃ?話すくらいはできるじゃろ。』
「・・・あ、あぁ。」
続いて京楽、ルキアにも同じことをする。


『まぁ、そなたが持つならば良い。本当は妾が持つべきものなのじゃが。』
「それは、どういう?」
戸惑った表情で浮竹は問うた。
『妾と霊王は右腕を互いに贈りあったのだ。夫婦となった証としての。』
「夫婦・・・。霊王に妃が居るという話は聞いたことがない。一体、どういうことなんだ?」


『夫婦といっても我らは共にあることは出来ぬ。妾が誕生したとき、霊王が天に上り、妾は地に下った。霊王は世界の楔。妾は世界の環なのじゃ。対の者であり、同じもの。互いに強く惹かれあうために、我らは離れる必要があった。その時に腕を贈りあったのじゃ。そして霊王は妾の存在を隠した。妾は霊王に何かあった時、あれに変わって霊王となる。そう定められている。』


「そう、なのか・・・。では、霊妃の腕は霊王宮にあるのか?」
『そうじゃ。響鬼といったか?あれは妾の右腕よ。』
「響鬼が?人型をしていたが・・・。」
『人型の方が何かと動き易かろう。』
霊妃はそう言ってほほ笑む。


『それにしても、この前降りたとき、咲夜は牢に閉じ込められていたようだったが。いつ外に出たのじゃ?』
「ずいぶん昔のことだ。」
『そうか。あの時は咲夜を助けるために降りたのじゃが・・・。酷い様であった。両手足を拘束され、体中傷だらけで動くことすらままならない状態だったのじゃ。』
その言葉にその場にいた全員が表情を曇らせる。


『あの牢から解き放たれたのか。そして今は独りではないのだな・・・。』
そういって慈しむような表情を浮かべる。
『して、そこの赤子は何じゃ?』
「咲夜の子だ。」
『咲夜の?』
霊妃は目を丸くして青藍を見つめる。
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