蒼の瞳、紅の瞳
■ 23.疑問は頭の隅へ


吉良イヅルは待っていた。
書類を捌きながら。
時折、ちらりと二人分のお弁当を眺める。
昼の鐘が鳴ってからもう半時ほどたっている。


鳳橋隊長はいつものように出かけてしまった。
今日も、執務室には僕一人だけ。


お腹すいたなぁ。
もう食べてしまおうか。
昨日の様子からして咲夜さんは朽木隊長と居るだろうし。
僕との約束など忘れているに違いない。
もう食べてしまおうと、弁当に手をかけたときだった。


『イヅル!!ごめん!遅くなった。』
執務室の扉が大きく開かれた。
「咲夜さん?」
彼女が、来た。
来ないと思って居たのに。


『ごめんね。寝坊した上にちょっと六番隊に寄ってきたものだから。』
「六番隊、ですか?」
イヅルは首をかしげる。
『うん。昨日は朽木家に泊まらせてもらったからね。そしたら私も白哉も二人して寝過ごしてしまって。』


二人して寝過ごす・・・?
それは一体、どういう状況なのだろうか・・・?
一緒に寝たということだろうか。


・・・あの無駄に大きい朽木家の屋敷で?
まぁ、あまり深くはつっこむまい。
二人とも酔って、自然に寝てしまったのかもしれないし。
うん。
きっとそうだ。
昨日は咲夜さんも結構呑んでいたし。


・・・酔った様子は見られなかったが。
あれだけ呑んでいて、朽木隊長と普通に戦っていたのだから。
『ルキアが気を利かせて半日非番にしてくれたのだけれど。突然だったからお詫びに恋次に鯛焼きを届けてきたんだ。イヅルにもこれをあげよう。』
そう言って鯛焼きが入っていると思われる紙袋を差し出した。


咲夜さんはいつも通りなので、僕が考えていることは表情には出ていなかったようだ。
考えるだけ無駄か。
そう思ってイヅルは、二人への疑問を頭の隅に追いやった。


「ありがとうございます。それで、阿散井君に会ったんですか?」
『うん。驚いていたよ。私が居ることにも、白哉と私に繋がりがあったことにも。』
「それはそうですよ。僕だって驚きましたから。」


『私、今日はまだ何も食べていないんだ。お弁当、もらってもいいかい?』
「はい。どうぞ。僕もこれから食べるつもりだったんです。」
『まだ食べていなかったのかい?もしかして待たせちゃった?』
「いえ。切りのいいところまで書類を片付けていただけです。」
半分本当で半分嘘だけれど。


『そうか。うわぁ、おいしそう。いただきます。』
咲夜さんは手を合わせてお弁当を食べ始める。
僕もまた弁当に手を付けた。
彼女は真っ先に卵焼きを口に入れる。
途端、彼女の表情が崩れた。


幸せそうな顔。
よかった。
美味しいみたいだ。
『やっぱり、これだよねぇ。この味。』
咲夜さんはにこにこと僕の作ったお弁当を食べる。
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