蒼の瞳、紅の瞳
■ 10.私は君のもの

「咲夜。」
そう名を呼ぶと、咲夜は青藍を彼らに預けて私の元に来る。
気を使ったのか、浮竹がルキアを連れて咲夜と入れ替わるように青藍の元へ向かう。
『何だ?』
「楽しんでいるか?」


『うん!みんなが、私を受け入れてくれて、嬉しかった。それで、それを白哉に早く伝えたいなぁと思っていたら、君が来て、また嬉しくなったのだ。』
咲夜は私の問いに笑顔で答える。
「そうか。」
『どうしたんだ?』
「いや、なんでもない。」


『そうか?』
「あぁ。」
白哉はそう返事をすると、私の頬に手を当てる。
その手にすり寄ると、白哉はふと微笑んだ。
『何を笑っているんだ?』


「いや、咲夜だな、と思ってな。」
『?どういうことだ?』
「そなたは人を寄せ付ける。同期にもこうやって受け入れられている。」
『ふふ。それは、白哉のお蔭だよ。君と出会わなければ、私はここには来なかっただろう。こんなに多くの人と話すことなどできなかった。・・・心を開けなかったから。』


「そうか。だが、私は・・・。」
白哉はそこで口籠る。
私は咲夜を独占したいと思っている。
だろうなぁ。


『ふふふ。君は、可愛い奴だなぁ。そう心配せずとも、私は君のものなのに。私にどれ程仲間が増えようと、特別なのは白哉だけだぞ?』
咲夜はそう言って白哉に抱き着いた。
やはり見透かされている。
白哉はそう思った。


「そうだな。」
この腕の中にいる咲夜は私だけのものなのだ。
浮竹や京楽、じい様にすら渡さない。
私の、咲夜なのだ。
そう思って、咲夜を抱きしめる。


『ふふ。あいしているよ。』
咲夜は小さく私の耳元で囁いた。
「私も、愛している。」


『うん。ほら、皆の所へ行こう。』
咲夜はそう言って私の手を引く。
繋がれた手は、幼いころから変わらない優しい手で、前を歩く咲夜はきらきらと輝いていて、眩しかった。

その後、酔っ払いどもに絡まれ、無理やり席に着かされた白哉は酒を呑んでいた。
ルキアは青藍をあやす浮竹たちに混ざって楽しそうにしている。
・・・なぜ私は咲夜の同窓会で酒を呑んでいるのだろうか。
そう疑問に思いつつも、彼らが青藍の面倒を見てくれているのでよしとする。


お蔭で今は咲夜と二人でゆっくりとできているのだ。
そして何より。
咲夜が嬉しそうなのだ。
いつもの悪戯な笑みではなく、本当に嬉しそうに微笑んでいる。
浮竹や京楽たちが青藍をあやす姿を眺めて。


『白哉。』
それまで特に話すこともなく微笑んでいた咲夜が私の名を呼んだ。
「何だ?」
そう言って咲夜の顔を見ると、やはり嬉しそうに微笑んでいた。


『私は、幸せ者だな。』
私と目が合うと、咲夜はそう言った。
「幸せか。」
『もちろん。白哉が居て、ルキアが居て、青藍が居て。浮竹や京楽がいて、同期たちも居て。皆が私を受け入れてくれた。』


「そうだな。」
『学院時代の私は、こんな日が来るとは思っていなかった。誰かを愛して、子どもを産むなど考えたこともなかったのだ。』
「そうか。」
そう頷いた白哉の手を握る。
すると、白哉が私の手を握り返してきて笑みが零れた。
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