蒼の瞳、紅の瞳
■ 9.お見通し

舞い終えた咲夜が舞台の上から見渡すと、皆が目に涙を浮かべていた。
皆、仲間思いなのだな。
私は彼らの仲間になることができるだろうか。
そんなことを考えていると、ぱらぱらと拍手が起こった。
そして、それはだんだん大きなものになっていく。
咲夜はそれに深く礼をして、舞台を降りる。


「「「漣さん!ありがとう。」」」
すると、何故か周りに人が集まってくる。
『え?』
「きっと、死んだ奴らも見てただろうな。」
「あぁ。絶対に喜んでるぞ。」


「「「ありがとう。」」」
『そんな、私は・・・。』
「よかったな、漣。」
お礼を言われて戸惑う咲夜に浮竹はそう声を掛けた。


『何故、お礼をいわれているんだ?』
「お前が、仲間のために舞ったことが嬉しいのだろう。俺も感動した。」
「うん。僕も。咲ちゃん、やっぱり凄いよ。」
『私は・・・君たちの、仲間になれたのか?』


「「「今さら何を言っているんですか!!漣さんは俺らの仲間ですよ!!」」」
『・・・そう、か。』
そう言って、笑顔を向けてくれる仲間たちをみて、咲夜は嬉しくなった。
そして、この喜びを白哉にも伝えたくなって、白哉に会いたい、と強く思った。


再び酒を呑みつつ、話を続けていると、よく知った霊圧が近づいてきた。
そして、扉が開かれる。
「失礼する。」
「失礼いたします。」
そこに居たのは、白哉と、泣いている青藍を抱えたルキアの姿がある。


『白哉?ルキアも。』
「青藍が泣き止まぬのだ。楽しんでいるところ悪いのだが・・・。」
白哉が困ったように言った。
青藍、という名をきいて同期の面々が一目見ようと群がってきた。


『うーん、お腹が空いたのか?』
青藍をルキアから受け取りながら咲夜は言った。
「しかし、ミルクを与えても飲みませんでした。」
『どうしたんだい?青藍。』
咲夜が声を掛けると、青藍は大人しくなっていく。


「寂しかったんじゃないか?」
その様子を見ていた浮竹が言う。
『ふふ。そうか。寂しかったのか。青藍ってば可愛いなぁ。』
「やはり、咲夜姉さまが一番なのですね。」
ルキアが感心したように言った。


「赤子でも母親が誰だかわかるからなぁ。」
「相変わらず、可愛いねぇ。ほら、青藍。僕だよ、解るかい?」
京楽はそう言って青藍の顔を覗き込む。
青藍はそんな京楽を不思議そうに見つめているだけだ。
「京楽、ずるいぞ。俺たちにも見せろー!」


白哉は咲夜と青藍に群がる男たちを冷めた目で見つめていた。
ルキアはそれに気が付いたのかおろおろとしている様子だ。
「こらこら、そんな目で見ていたら漣に怒られるぞ。」
「浮竹隊長。」
浮竹の登場にルキアの表情がほっとしたものになる。


「・・・何故あれ程までに人が群がっているのだ。咲夜は名前すら知らないと言っていた。」
思っていた以上に不機嫌な声が出る。
理由は解っているが納得がいかないのは私の独占欲なのだろう。


「ははは。漣だから仕方がないさ。」
「気に入らぬ。」
「でも、良かったじゃないか。漣が同期に受け入れられて。お前もそれが心配で来たんだろう?」


浮竹はそう言って笑う。
普段鈍いくせにこういう時だけ鋭いのだ。
この男は。
「五月蝿いぞ。」


「今日の着物もお前が選んだそうだな。」
「そうだが?」
「いや、お前は意外と独占欲が強いのだなぁと思ってな。物にはあまり執着しないようだったから。」


見抜かれている。
きっとこの私の醜い感情もすべてお見通しなのだろう。
それは多分、咲夜もそうなのだが。
「・・・咲夜だからだ。」
「はは。そうだな。」
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