蒼の瞳、紅の瞳
■ 8.悼む

「それにしても、人が減ったよな・・・。」
その言葉に皆が頷く。
「そうだな。俺たちも数百年も死神をやっているんだなぁ。」
「浮竹と京楽なんか隊長だぞ?」


「漣さんは副隊長だったしなぁ。」
「俺らも席官だし。」
「「「俺たちの世代って実は優秀?」」」
「そりゃあ、数百年も死神をやっていればそんなこともあるだろうよ。」
京楽がそう言って苦笑する。


「死んでいった者もいる。」
「あぁ。俺は皆のことを覚えているぞ。」
「俺もだ。」
「僕も。」
先ほどまで騒がしかった場が、しんみりとした空気になっていく。


『人であろうと、死神であろうと、死からは逃れられない。私たちは、それをよく解っているじゃないか。』
「あぁ。でもなぁ、俺は助けられる命もあったのではないかと、迷うことがある。」
浮竹が静かに言った。


『それでいいんじゃないか。自問自答を繰り返す。何度も、何度も。そうすれば、過去の失敗を繰り返すことはなくなっていくはずだ。そうでなければ、報われない。』
「そうだな。」


『私が、隊長になるのを拒んだのは、その責任が重すぎるからだ。私にはそれに耐える自信がない。私は、弱いんだ。だから隊長にはならなかった。』
咲夜はそう言って俯く。


「いいんじゃないの。僕はそれでいいと思うよ。咲ちゃんはそれ以外にも色々と抱えているからね。」
京楽は俯いた咲夜の頭に手をのせて軽く撫でる。


『まぁ、ね。でも、隊長をやっている君たちは凄いと思う。本当に尊敬するよ。白哉や他の隊長たちもだけれど。』
「それを解ってくれる咲ちゃんが居るから、僕らは頑張れるのさ。」
「そうだな。そうやって苦悩を解ってくれる友人が居るのは心強い。」
浮竹はそう言ってほほ笑む。


『ふふ。そうか。・・・さて、では、先に旅立ったものたちのために、鎮魂の舞でも舞ってみようかな。だれか、楽を嗜んでいる者は居るかい?』
咲夜の問いに数人の手が挙がる。
「流石咲ちゃん。楽しみだなぁ。」
『よし。浮竹、その羽織借りるぞ。袖が長い方が舞いやすい。』
「あぁ。」


咲夜が舞台にあがる。
それだけで会場の空気が変わった。
演奏が始まると、笛の音がするすると空気を振動させていく。
前奏が終わると、咲夜が動き出した。


ひらり、ひらり。
何かを祈るような、舞。
男物の羽織をひらひらと翻す。
その表情はどこかの国の聖母のようで。
その場にいた誰もがそんな咲夜の姿に目を奪われていた。
奏者が最後の音を奏で終わると、その余韻がなくなるまで誰一人として口を開くものは居なかった。
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