蒼の瞳、紅の瞳
■ 5.院生時代の話A

「そういえば六回生の時かな。三人とも一か月ぐらい姿を消したよね。」
「そうそう。寮部屋に行っても浮竹と京楽はいなかったし。」
「あぁ、それね・・・。」
「・・・大変だったよな。」
『あぁ・・・。』
「死にかけたよね・・・。」
問われた三人はそう言って遠い目をする。


「ど、どうしたんだ?三人とも・・・。」
三人の様子に恐る恐ると言った様子で一人が聞いた。
「斬魄刀を取り上げられて・・・。」
「山の中に放り出されて・・・。」
『大虚に襲われて・・・。』
『「「死ぬかと思った。」」』


「一体何があったんだ・・・?」
『山じいの仕業だ。』
「そうそう。合宿とか言っちゃってさ・・・。」
「俺たち三人で、山の中で一か月生き延びたんだ。」


『しかも毎日虚が出てくるような山だぞ?』
「結界が張ってあって山からは出られないようになっていたしな。」
「そして何よりも大変だったのは・・・。」
『「「大虚!!」」』


『院生に大虚を差し向けるなんて山じいは鬼だよな。』
「あぁ。それも斬魄刀を取り上げたうえで、だからな。」
「僕らよく生き延びたよねぇ。虚閃を打たれたときは本当に命の危険を感じた。」
『でも、大変だったけど面白くもあったよね。』
「まぁな。」


「なんていうか・・・。」
「お前らも大変だったんだな・・・。」
「そりゃあ僕らじゃ浮竹たちに敵うはずがない。」
「それでも楽しかったって言える漣さんってやっぱり凄いんだな・・・。」


『あはは。だって、いろいろ話したのはあの時が初めてだったからなぁ。』
「そうだねぇ。浮竹の片思いとかね。」
「お前、それは!!」
ニヤニヤする京楽に浮竹が焦ったような声を出す。
『ふふふ。そうだね。』


「「「浮竹の片思い!?」」」
「そうだよ。この色男が片思い。」
『そうそう。私も驚いた。振っている場面しか見たことがなかったから。』
「・・・いいだろう別に。それにもう昔のことだ。」
二人の楽しげな様子に浮竹は諦めたように言った。


「それで?相手は誰だったの?」
「もしかして漣さん?」
「いやいや、本人に片思いを相談してどうする。」
「あぁ、そうか。京楽も居たんだものな。二人が付き合ってしまったら気まずいか。」
「いや、そういうことじゃないだろう・・・。」


「「「で、誰だったの?」」」
『あはは。誰だったっけ?浮竹。』
咲夜は浮竹本人に言わせようと話を振る。
「俺に言わせる気か・・・。」
「僕が言ってもいいけどね。」


『もちろん、私が言ってもいいぞ?』
「・・・ったく、お前ら。後で覚えていろよ。お前らの話もしてやるからな。」
『あはは。そしたら浮竹の恥ずかしい話をもっとしてやる。』
「そうだね。僕ら浮竹のことなら話題に事欠かないよ。」
「それは俺だって同じだぞ。・・・はぁ。お前ら本当にやだ。」


『それで、誰だったのかな?』
浮竹は深くため息を吐いた。
「・・・和紗さんだよ。」
「「「和紗さん!?」」」
「あぁ。」


「あの、治癒能力の高かった?」
「そうだ。」
「・・・その和紗は今、俺の妻だぞ。」
浮竹たちの話を聞いていた一人がそう言った。


「だから言いたくなかったんだ・・・。」
『あはは。そうだったのか。』
「しかし、あの浮竹が和紗さんを好きだったとはなぁ。」
「でも、浮竹は何もしなかったよね。」


「いいんだよ。見ているだけで良かったんだ。大体、あの頃すでにお前らは付き合っていただろ。」
浮竹は開き直ったのか素直にそう言った。
「あはは。知っていたのか。まぁ、隠しても居なかったが。」


「そこで身を引くってのが浮竹だよね。」
京楽が面白そうに言った。
『確かに。告白ぐらいすればよかったのに。』
「いいだろう別に・・・。」
浮竹は拗ねたように言う。
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