蒼の瞳、紅の瞳
■ 4.院生時代の話@

『というか、よく見たら、君たちみんな貴族の出身なんだな。見た顔がいくつかある。当主も何人かいるようだが。』
「そうだね。僕らの世代は貴族出身が多かったから。」
『そうなのか。』


「今さら気が付いたのか?」
浮竹が呆れたように言った。
『はは。すまない。漣家は他の貴族とはほとんどかかわりを持たない上に、当時は周りに興味が全くなかった。貴族の者の顔を覚えたのは朽木家に嫁いでからだ。君たち二人だって、私を毎日のように追いかけてこなければ覚えなかっただろう。』


「咲ちゃん、それもどうなの・・・。」
「まぁまぁ、そのおかげで俺たちは漣に認識してもらえたわけだ。あの苦労は無駄じゃなかったんだな。」
「そう言えばお前らよく誰かを追いかけていたな。あれは漣さんだったのか。」


『そうだ。山じいの命で私をどうにか授業に出席させようと、毎日のように追いかけられた。』
懐かしむように咲夜が言った。
「咲ちゃん、学院の外にまで逃げるんだもの。」
「「「えぇ!?どうやってあの門を突破していたんだ?」」」


皆疑問に思うのはそこなのか。
「塀の扉の合鍵を作っていたんだよな。お前って奴は本当に・・・。」
『あはは。君たちがあまりにもしつこく追いかけて来るからだろう。』
「それで、抜け出してどこに行っていたかと思えば、護廷隊だっていうんだぞ。まったく、銀嶺殿も蒼純殿もお前を甘やかしすぎだ。」


「本当だよ。僕らはその護廷隊に行くために必死になって居たのにさ。」
『だって、私は霊術院に行かずとも死神になれたもの。霊術院で勉強することなんて何もなかったんだ。授業を受けるより、蒼純様たちの仕事を見ている方がよっぽど勉強になった。』


「だからってなぁ、お前、俺たちは必死で探していたんだぞ。」
「本当に。学院時代に一番頑張ったことは咲ちゃんを探すことだよ。咲ちゃん、すぐ霊圧消しちゃうし、気配も読み取れなかったし。」
『それは、悪かったと思っているよ。今は。』


「だからお前らは授業に出ていなくても良かったのか。俺たちはてっきり・・・なぁ?」
「三人で仲良くサボっているんだと思っていた。」
『あはは。そんな時も、あったよね?』
「まぁね。咲ちゃんがやっと僕らに慣れてくれたからね。」


「あぁ。五回生くらいの時からだな。それまでは本当に野良猫のように俺たちを警戒し続けていた・・・。」
浮竹はそう言って遠い目をする。
『あは。それはごめん。』


「あと浮竹が寝込むと僕と咲ちゃんで看病をしてたんだよね。」
「漣さんの看病だと・・・!?」
「「「羨ましい。」」」
『主に私が看病していたけどな。京楽は寝込んでいる浮竹の傍で酒を呑んでいたじゃないか。』


「そうだったな。そして漣は男子寮なのに普通に入ってきたよな。」
「「「何だって!?」」」
浮竹の言葉に周りから驚きの声が上がる。
『まぁね。授業中は皆居なかったからなぁ。浮竹には同室者が居なかったし。』


「それにしたって無防備すぎ。僕と浮竹だったから良かったものの、他の危ない男だったら咲ちゃん襲われてるよ?男二人に女の子一人なんてさ。」
『そんなことをして、その男が無事だと思うか?』
「あはは。確かに。咲ちゃんに痛い目に遭わされた後、朽木家に潰されるだろうね。」


『だろう?縛道をかけられたって、手足を拘束されたって、霊圧を封じられたって、私は負けない。』
「・・・お前は規格外だからな。」
自慢げに言い切った咲夜に浮竹は呆れたように言った。
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