蒼の瞳、紅の瞳
■ 22.朝寝坊


白哉の意識が深い眠りの中から浮上した。
よく眠った気がする。
懐かしい、温かさに包まれて。
ふと、視線を下に向けると、そこには腕の中で眠る咲夜が居た。
すやすやと子供のように眠っている。


腕に力を込めてみる。
彼女が本当にここに居るのか確かめるように。
しっかりと、温もりがある。
そうか。
本当に帰ってきたのだ。
昨日のやり取りは夢ではなかったのだな。


そして自分が彼女の胸の中で涙を流したことを思い出した。
それから、あの場所には彼女以外にも浮竹や京楽たちが居たことも。


・・・失態だ。
朽木家の当主たる私が、他人にあのような姿を見せるなど。
しかし何故この女は私の布団で眠っているのだろうか。
私は彼女と酒を飲んでいたはず。
いつ眠ってしまったのだろうか。


(起きたか、我が主。)
千本桜の声がする。
「あぁ。私はいつ眠ったのだ?」
(咲夜と酒を呑んで、それから眠ってしまった。咲夜に頼まれて、私が布団まで運んだのだ。)


「そうか。して、何故こやつはここに居る?」
(主が寂しいだろうと思ってな。我が咲夜に頼んだのだ。)
「なんだと?」
白哉の声が鋭くなる。


(そう怒るな。握っていた手を離さなかったのは主だぞ。おかげでよく眠れたであろう。咲夜が今ここに居ることを感じることができたであろう。)
「・・・気づいていたか。」


(もちろん。主のことは何でも分かる。主と我は同じものなのだと咲夜がいっていた。)
「そうか。そうかもしれぬな。」


『うーん・・・。ん?おはよう、白哉。千本桜も。よく眠れたかい?』
咲夜が目を覚ました。
「あぁ。」
(我もだ。)


『それはよかった。ところで今何時だい?ずいぶん陽が高いような気がするのだけれど。』
そう言われて、白哉は起き上がる。


そうだ。
私は今日非番などではない。
これでは遅刻ではないか。
誰も起こしに来ないとは。
と、そこへ襖の外から声がかかる。


「白哉様、そろそろお目覚めくださいませ。」
清家の声だ。それと同時に襖が開けられる。


「・・・おや?お二人でお休みになられたのですかな?」
「なっ。これはっ!!」
清家の言葉に思わず焦る。
『そうそう。白哉が離してくれなくてな。』
咲夜が面白がって抱き着いてきた。


「そうでしたか。咲夜様がお相手なら私は何も申しませぬ。して、祝言は何時にいたしましょうかな?」
清家まで面白がっているようだ。


「清家・・・やめろ。これが妻になるなら、私には妻はいらぬ。」
『白哉ひどーい!私だって君みたいな手のかかる夫は願い下げだよ。』


「ほほほ、それは残念ですな。それよりも、そろそろ準備なさいませ。午後のお仕事に間に合わなくなります故。」
「そうだ、これでは遅刻ではないか。隊長が寝過ごすなど、示しがつかぬ。」


「それは問題ありませぬ。よく眠っているようだからと、ルキア様が副隊長殿に連絡を入れたようでございます。」
「ルキアが?・・・そうか。」


『さっすがルキア。気が利くね。さて、ゆっくりしていたら本当に間に合わなくなってしまうね。起きようか。』
「あぁ、そうだな。」
雰囲気が柔らかくなった白哉の様子に清家は微笑んだ。


『あっ!私の分のご飯はいらないよ。私にはお弁当があるんだ。だから着替えたらすぐに出かけるよ。』
「そうですか。では、そのように。私はこれで失礼いたします。」
清家はそう言って部屋から出て行った。
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