蒼の瞳、紅の瞳
■ 2.乾杯

浮竹に言われて咲夜は京楽と共に座敷へと足を踏み入れる。
すると、そこには二十人程の同期と思われる人たちが居た。
皆が一斉に咲夜たちの方を向き、驚いたように目を丸くしている。
それを見た咲夜はそっと浮竹の後ろに隠れた。


「京楽と漣が来たぞ。」
「やぁ、皆久しぶりだねぇ。」
京楽がそういうと、あちらこちらから、京楽へと声が掛かる。
「ほら、漣も、挨拶しないか。いつまで俺の後ろに隠れているんだ。」
そう言って腕を引っ張られ、咲夜は前に出された。


『ちょっと!?浮竹!?』
「ほらほら、早くしろよ。大丈夫だから。」
浮竹はそう言って咲夜の背中をポンと叩いた。
『えぇと、だな。朽木咲夜だ。・・・よろしく。』


やっとのことで名前だけ告げた咲夜に皆がさらに目を丸くする。
そして、数秒の沈黙の後、
「「「うおぉぉぉぉ!!!!!」」」
という雄叫びが響き渡る。


『!?』
咲夜はその様子に驚いて浮竹の袖をつかむ。
「あはは。やっぱりこうなったか。」
京楽はそういって苦笑いだ。
「こらこら、お前ら五月蝿いぞ。」
「そうそう。咲ちゃんが吃驚しちゃってるじゃないの。」


『あの?これは一体・・・?』
咲夜はそう言って不安そうに浮竹を見上げる。
「みんなお前を歓迎しているんだよ。」
『歓迎?何故?』


「お前に会いたかったっていうことだろう。」
「そうだよ。皆咲ちゃんと仲良くしてみたかったんだよ。そうだろう?」
京楽が皆にそう問うと、
「「「もちろん!」」」
という返事が返ってきた。


「うわぁ、漣さんをこんなに近くで見られるなんて!」
「ていうか、今は朽木さんだよね!」
『あ、あぁ。』
「同窓会もう来ないかと思っていたよ。」


「いやー、嬉しいなぁ。俺、今日本当に来てよかった。」
「俺も。幸せすぎて死ねる。」
「馬鹿だなお前。女房が聞いたら泣くぞ。」
「だって、漣さんだぞ?俺らの世代の伝説的な人だぞ?」
『へ?』


「そうそう。あの浮竹や京楽を負かすことが出来るんだもの。」
「俺たちなんか彼奴らにどれだけ挑んでも勝てなかったのに。」
「それに学院の中で一番綺麗だったよなぁ。」
「そうそう。もちろん、今もだけれどね。」
『あ、ありがとう・・・?』


何なのだ?
何故こんなにも人が寄ってくる?
というか、皆近いぞ・・・。
「こらこら、漣に群がるな。」
『う、浮竹。』
浮竹の姿が見えてほっとする。


「ほら、ここに座れ。話はそれからでもいいだろう。」
「うわ、浮竹ずるいぞ。そうやって漣さんを自分の隣に座らせる気だな!?」
同期の一人が浮竹に言った。
「咲ちゃんの隣は僕と浮竹って決まってるの。」
漸く席に着いた咲夜の隣に京楽もまた座る。


「あ!京楽まで!!!」
「「「ずるい!」」」
二人は周りからブーイングを受けつつも涼しい顔だ。


浮竹と京楽が隣に座ってくれたおかげで咲夜はやっと一息つく。
きっと、緊張している私を気遣って隣に座ってくれたのだ。
『・・・ありがとう。』
咲夜は小さくそう言った。


「さぁ、皆席に着け。宴を始めるぞ。」
浮竹がそう言うと、文句と言いつつも皆が席に着く。
さすが浮竹だ。
「今日は久しぶりの同窓会だ。死神を続けている奴もやめた奴もいる。死んだやつも居る。俺たちもいい加減年を取ったからな。会えるうちに会っておかないとな。今日は皆で楽しもうじゃないか。」
浮竹がそう言うと、皆が声を上げる。


「じゃあ、乾杯!!!」
「「「「「乾杯!!!!」」」」」
浮竹の音頭で同窓会が始まったのだった。
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