蒼の瞳、紅の瞳
■ 1.同窓会

朽木家に待望の長男が生まれてから早三か月。
咲夜は青藍を連れて雨乾堂にやってきていた。
といっても、それはすでに日課となりつつあるのだが。
『浮竹、居るか?』


「あぁ。・・・ちょうどいいところに来たな。」
浮竹はそう言って紙を差し出す。
『ん?何だ?』
「同窓会があるらしいぞ。霊術院時代の。」
『へぇ。浮竹は行くのか?』


「そうだな。こうして顔を合わせられるのもそうないことだから俺は行くよ。生き残って居る者も少ないしな。」
『・・・そうか。』
「お前も行くか?一度も顔を出したことがないだろう。」
『・・・。』
浮竹の問いに咲夜は困ったように黙り込む。


『私が行ってもいいのだろうか・・・。』
「いいんじゃないか?皆喜ぶと思うが。」
『でも、私は浮竹と京楽としかまともに話したことがない。』
「ははは。だからこそじゃないか。お前はもう、あの頃のお前じゃないんだ。もう、同期と普通に話すことだってできるだろう?」


『・・・そうだな。浮竹が行くのなら私も行く。』
咲夜はそう言って軽く微笑む。
「そうか。じゃあ決まりだな。お前が行くなら、京楽もちゃんと来るだろう。」
『ふふ。そうだな。二人が居れば、私も安心できる。』


そんな話をしてから一か月ほど後。
咲夜はある料亭に来ていた。
もちろん白哉にはちゃんと許可を貰っているし、青藍はルキアに見てもらっている。
『・・・あいつら、ちゃんと来ているんだろうな?』
咲夜は扉を前にして、立ち止まる。


あの頃の私を知っている者に会うのは緊張する。
関わりがなかったとはいえ、浮竹と京楽と共に三人で目立っていた自覚はある。
どうしよう。
私は本来人見知りなのだぞ。
だがしかし、二人以外の同期と会ってみたいのも事実なのだ。


「あれ?咲ちゃん?何してるの、こんなところで。」
『き、京楽!?驚かすなよ。』
「あはは。ごめんごめん。本当に来たんだね。」
『・・・あぁ。』
笑いながら言う京楽に咲夜は拗ねたような返事をした。


「それで?中には入らないの?」
『・・・今から入ろうと思っていたところだ。』
「へぇ?じゃあ、入ったらいいんじゃないの?」
くそ。
京楽の奴、完全に面白がっているだろう。
私が入るのに戸惑っていたことなどお見通しなのだ。


『京楽が入るなら入る。』
「あはは。そんなに固くならなくてもいいと思うけどねぇ。」
『笑うな!!』


扉の前で言い合いをしていると、突然中から扉が開かれた。
『うわ!』
咲夜は思わず京楽の袖をつかむ。
「・・・お前ら扉の前で何をごちゃごちゃやっているんだ。」
顔を出したのは浮竹である。


「咲ちゃんが珍しくおどおどしていたからね。面白くて。」
『面白がるな!』
咲夜はそう言って掴んでいた京楽の袖を捨てるように放した。


「別に掴んだままでもいいのに。」
『五月蝿いぞ!』
「ははは。本当に緊張しているんだな。いつも通りでいいんだ。ほらほら、早く中に入らないか。皆お待ちかねだぞ。」
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