蒼の瞳、紅の瞳
■ 40.家族

「ほう。白哉坊が父親になったか。」
気が付くと、咲夜の隣には夜一が居た。
『夜一さん?』
「久しぶりじゃの、咲夜。子が生まれたと聞いたのでな。来てみたのじゃ。」
「・・・どこから入った、化け猫。」


「この儂を捕まえられるものなどそうは居らんじゃろう。」
げんなりした様子の白哉に夜一は面白そうにそう言った。
「まぁまぁ。彼女も祝いに来たんだろう。」
浮竹が白哉の肩に手をのせる。


「美しい瞳じゃの。咲夜、おめでとう。これは、儂と喜助からじゃ。受け取れ。」
夜一はそう言って何処からか一本の瓶を取り出した。
『これは?』
「葡萄酒じゃ。これなら、その子が大きくなってから共に呑めるじゃろう。」
『ありがとうございます。』


『ふう。』
あの後、さすがにあれだけの隊長格が仕事を抜けているのはまずいということになり、山じいの一声で白哉とルキア以外の死神は仕事に戻って行った。
今は白哉と青藍、咲夜にルキアの四人である。


青藍は先ほどからルキアに抱かれていた。
ルキアは本当に嬉しそうに世話をしている。
「疲れたか?」
一息ついた咲夜に白哉は声を掛けた。


『まぁな。でも、嬉しかった。』
咲夜はそう言って白哉に微笑む。
「良かったな。」
『あぁ。・・・ルキア、こっちにおいで。』
唐突に咲夜はそう言った。


「・・・?はい。姉さま。」
ルキアは首を傾げながらも青藍を抱えたまま咲夜に寄ってくる。
そんなルキアを咲夜は腕を伸ばして青藍ごと抱きしめた。
「姉さま!?」


『ふふふ。ほら、白哉も。』
咲夜は白哉の腕を掴んで自らの体にその腕を回させた。
ルキアまでもその腕の中に包まれる。
『これが、家族か。家族とはこんなに温かいものなのだな。ありがとう。白哉、ルキア、青藍。私の家族になってくれて。』


「礼を言うのはこちらの方だ。」
兄様の腕に力が入る。
といっても苦しくない程度に、やさしく私たちを包み込むように。


「そうです。私など、兄様に拾っていただいた上に、こんなに素敵な姉さまも出来ました。可愛い甥も出来ました。いくらお礼を言っても足りませぬ。」
ルキアはそう言葉にして、実感する。


私は本当に、幸運なのだと。
兄様と緋真さまが出会わなければ、私と兄様が出会うこともなく、こうやって兄様のお子を抱くことも、姉さまの腕の中に居ることも出来なかったのだ。


緋真さま。
私の姉。
素敵な出会いをありがとうございます。
私を守ってくれてありがとうございます。
お蔭で私は幸せです。
姉さまもきっとこんな風に幸せだったのですね。



2016.05.22 息吹編 完
〜幸福編に続く〜
青藍は「せいらん」と読みます。
Blogにて白哉さんと咲夜さんの息子が主人公の話があります、と書きましたが、その主人公です。
本編が終わったら、それもアップしますので、よろしければお付き合いいただきたいです。
この本編、まだ続きますが。
次の章が最終章です。
何はともあれ、ここまで読んでくださった方にお礼を申し上げます。
ありがとうございました!

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