蒼の瞳、紅の瞳
■ 35.女嫌い

「そういえば、最近十二番隊にも出入りしているようだな。」
浮竹が思い出したように言う。
「あぁ、阿近ですね。あれは研究者仲間ですよ。技局はいろんなものと人がいて面白い。」
『なるほど。そう言えば、君は医者だが、研究者でもあったな。今でも私を研究したいのか?』


「当たり前だ。できることなら、すべてを解明したい・・・。」
睦月が残念そうに言った。
「ははは。それは難しいだろうなぁ。白哉が許さないだろう。」
「そうなんですよねぇ。ご当主ったら血液検査も駄目って言うんですよ。毎年健康診断で採血してるじゃないですか・・・。」


『まぁ、それは仕方がない。私のすべては白哉のものだからな。白哉が嫌だと言うなら私も勝手に血をやる訳にはいかないのだ。』
「だから、そうやってさらりと惚気るなよ。」
呆れたように睦月が言った。


『これは惚気ではない。事実だ。』
「「いや、惚気だろ。」」
浮竹と睦月の声が重なる。
ルキアも苦笑いだ。


『まぁ、それはいいとしてだな。最近、山じいが五月蝿いのだ。』
「何でだ?」
『草薙睦月を死神にせよ。ってね。』
「・・・。」
咲夜の言葉に睦月の動きが止まった。


「ははは。先生らしいな。鬼道も使えることだし、いいんじゃないか?」
「ちょっと、適当なこと言わんでくださいよ・・・。俺は死神になんかなりません。」
『ふふふ。そういうと思ったよ。』
「何故なのだ?」


「俺は、医者だからな。鬼道を使えるのはご当主が・・・。」
何かを思い出したのか、睦月は顔を青くした。
「兄様が?」
「いや、なんでもない。とりあえず、俺は死神にはならないぞ。」


『それは残念。実は四番隊と十二番隊から勧誘が来ているのだが。それから白哉も君を死神にしようか迷っているぞ。』
「・・・。」
「兄様まで?確かに睦月の鬼道の才はすごいものだが。」


「ははは。十三番隊でもいいぞ。お前の薬はよく効くからな。戦闘においても席官レベルだと聞いたぞ。」
「・・・やめてくださいよ。俺はただの医者です。」
『烈さんとマユリさんは君を気に入っているようだよ。それから山じいもね。もちろん白哉も。』


「俺も気に入っているぞ。睦月は女性でなくても引く手あまたなのか。」
「確かに、学院でも睦月の人気は高かったようです。整った顔と優しい物腰が素敵だと同期がよく言っていました。」
『優しい物腰、だってさ?』
咲夜が面白がるように言った。
「やめてくれ。俺は女が嫌いだ。」


『あはは。私やルキアはいいのか?』
「お前らはいいんだ。女のあの粘着質な感じがないからな。乱菊もサバサバしているし。あぁ、でも粘着質でなくても、雛森副隊長のような女の子らしすぎる奴は苦手だ。ああいうのは、どうしたらいいのか解らない。すぐに泣かれてしまいそうで。」
『なるほどねぇ。』


「女性隊士に色目を使われても靡かないわけだな。」
浮竹はそう言って笑う。
「浮竹さんも人のこと言えないでしょう・・・。」
「ん?俺なんかに色目を使うような隊士は居ないさ。」
浮竹は笑顔で言い放った。


「・・・俺は貴方の鈍感さにびっくりですよ。」
「浮竹隊長はこういう方なのだ。」
『あはは。昔からこうだから仕方がない。無自覚だよなぁ。』


「「無自覚なのはお前だろう。」」
咲夜の発言にまたもや浮竹と睦月の声が重なった。
「咲夜姉さま・・・。」
ルキアは苦笑いである。
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