■ 32.楽しみが増える
『ふふふ。君の妹はなかなか鋭いなぁ。』
琥珀庵を出た咲夜は蓮に向かってそう言った。
睦月はまだ写真を撮られるらしく、晴に捕まったままだ。
白哉が許可を出したので、彼は一人、琥珀庵においてこられたのである。
・・・生贄ともいうが。
「あはは。僕も驚きました。」
『晴はきっと、いい死神になるよ。』
「そう言ってもらえると晴も喜びます。」
『今は、五回生だったな。じゃあ、入隊してくるのは二年後の春か。』
「えぇ。何事もなければ。」
『きっと大丈夫だ。楽しみだなぁ。』
「・・・また個人指導をする気か。」
呆れたように、白哉は言う。
『あはは。ばれちゃった?』
「あぁ。」
『いいじゃないか。面白そうだろう?』
「まぁな。あの観察眼と鋭さはなかなかのものだ。」
『君もそう思っているんじゃないか。二年後なら、私も動けるようになっているだろう。』
「・・・二人目が出来ている可能性もあるがな。」
白哉は横目で咲夜を見ながらそう言った。
『まぁ、そうだなぁ。白哉との子供なら何人いてもいいからな。』
「そうか。では、私は遠慮せずともいいという訳だな。」
白哉はそう言って、色を含んだ目線で咲夜を見る。
『いや、それは、だな・・・。』
「・・・子どもが無事に生まれてからだな。楽しみにしていよう。」
『あはは。』
「そういう会話を普通にしないでくださいよ・・・。」
二人の様子に蓮は呆れたように言ったのだった。
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