蒼の瞳、紅の瞳
■ 31.名探偵、南雲晴

「・・・とまぁ、こんな会話をしてその人は帰っていたのだけれど。その横顔と、後姿が父さんにそっくりだった。」
「そう、だったのか。」
「その後に、私の瞳はお祖父さんに似たという話を聞いたでしょう?だから、もしかしたらとは思っていたんだよね。お父さんは昔の話をしないし。」


「いつかは、話さなければとは思っていたのだが。」
困ったように瑛二は言った。
「ふふ。僕たちもそれをさっき聞いたんだ。」
「あぁ。父さんはなかなか凄い人だと思ったよ。」


『そうだなぁ。私もそう思う。私や白哉には、相手を家に引き入れることは出来ても家を捨てるという決断は出来ないからな。』
「あぁ。そうだな。」
「え?お父さん、何をしたの?」
興味津々といった様子で晴は言った。


『ふふふ。君にも話してあげよう。君の父上と母上はね・・・。』
「えぇ!!!そんな大恋愛だったの!?まるで、小説じゃない!」
話を聞き終えた晴は目を丸くしてそう言った。
『ふふふ。そうだろう?』
「お父さん格好いいね!そんなことできちゃう人だったんだ。」


「・・・驚くのはそこなのかい?」
燿が不思議そうに言った。
「うん。だってお父さん、慎重すぎるっていうか、なんていうか・・・。だから、そんな大胆なことできる人だとは思わなかった。」


「いや、それは俺もそう思っていたけれど、父さんが貴族だったっていうことには驚かないの?」
「あんまり。だってお父さん、動きも着物の着方も綺麗だし。ほら、朽木隊長だって、動きが綺麗でしょう?」


「・・・そうか?」
晴に見られた白哉は、咲夜に問うた。
『あぁ、それはわかるな。着物の袖や裾の動きまで綺麗なんだよな。本人は意識してやっている感じでもないんだが。』
「そうでしょう?ただの着流しでもなんか綺麗に見えるっていうか。」
『そうそう。羨ましいよねぇ。』


「えぇ、本当に。それに、歴史やら何やらにやたらと詳しいし。教養があるっていうのかな。だからそれなりの家で育った人なんだろうなとは思っていたんだ。さすがに上流貴族の次男坊って言うのは驚いたけど。」
「晴ってば鋭いねぇ。僕は全く気が付かなかったよ。」
「はは。俺もだよ。」


「それにお父さんってあまり物を持たないに人なのに、一つだけ大切にしている物があるでしょう?箪笥に隠れた抽斗があるものね。」
「どうして晴がそれを知っているんだ・・・?」
目を見開いて瑛二は言った。


「見つけたのは偶然だよ。抽斗と箪笥の大きさがなんとなくずれているような気がして、それであれこれやっていたら、布にくるまれた笛が出てきたの。」
『あはは。彼女に隠し事をするのは難しそうだなぁ。』
「ふふ。それでね、布をとったら綺麗な笛だった。私が見てもいい笛だとわかるのだから相当な品のはずだわ。そうでしょう?」


「あぁ。あれは、慶一兄さんの持っている笛と双子の笛なんだ。同じ竹から作られたものでね。昔はよく兄さんと一緒に笛を吹いた。」
懐かしそうに瑛二の瞳が伏せられる。
「うん。だから、お父さんが貴族だって言われても、特には驚かないかな。」
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