蒼の瞳、紅の瞳
■ 30.紫の瞳の老人

「・・・はぁ。お前は乱菊並みに、いや、それ以上に厄介な奴だな。」
「乱菊?松本副隊長のことですか?」
晴が首を傾げる。
パシャリ。
すでに撮影は始まっているらしい。


「あぁ。朽木家に女性死神協会の本部を作ろうと計画する強者でな・・・。いや、それを実行する草鹿も草鹿なんだが。」
『あはは。白哉も手を焼いている。』
「困ったものだ。奴らはどうやって、我が屋敷の警護を潜り抜けているのか・・・。」


『あはは。向こうには涅副隊長が居るからなぁ。技術開発局の技術を使い放題なのだろう。』
「そのようなことに使うべきものではないだろう・・・。」
半分あきらめたように白哉は言った。


「ごほん。あー、晴?ちょっと話があるのだが。」
それまで黙って見守っていた瑛二が口を開いた。
「んー?」
晴は睦月の写真ととりながら答える。


「ちゃんと聞きなさい。その手を止めないか。」
「大丈夫だよ。ちゃんと聞いてるってば。何?」
「まったく・・・。」
「晴、僕たちのお祖父さんについてのことだよ。」


「お祖父さん?」
蓮の言葉に漸く晴は手を止めた。
睦月はすでにぐったりとしている。
「そうだ。今度、顔を見せに行こうと思う。お前も行ってくれるだろうか。あまりいい思いをしないかもしれないんだが。」


「ふぅん?それって、目の色が蓮君の左目や、私の目と同じ人?」
「あぁ。」
「それで、白髪のおじいさんだよね。会ったことあるよー。」
晴はこともなげにそう言った。


「「「え?」」」
その言葉に一同は固まる。
「?なんでそんなに驚いてるの?」
「いや、え?いつ会ったんだ?」
「えーと・・・3年ぐらい前かなぁ。」


「「そんなに前!?」」
思わず瑛二と佳乃の声が重なった。
「私が霊術院から帰ってきたら、うちのお店を覗いている人が居たの。」
思い出すように晴は語る。


三年前のこと。
霊術院からの帰りに、晴は琥珀庵の前にたたずむ老人を見つけた。
貴族風の格好をしていて、お店の中をじっと見つめていたのだ。
「・・・瑛二。」
ポツリ、とその人は呟いた。


瑛二。
それはこの店の主で、私の父の名である。
父の知り合いならばお店に入ってもらおう。
そう思って晴は声を掛けた。


「すこし、休まれていきませんか?色々な茶葉を揃えているので楽しめると思いますよ。」
そう声を掛けた晴をみて老人は目を丸くしたのだ。
晴もまた驚いた。
その老人の瞳は紫水晶のような瞳だった。
私と、同じ色。


「君が・・・。」
小さく老人が何かをいおうとしているのが分かった。
「はい?」
晴が聞き返すと、老人は戸惑ったように言葉を止めた。


「・・・いや、君はここの店の子なのかい?」
「はい!」
同じ色を持つ人が蓮君以外に居たなんて。
そう思って晴は思わず笑顔でそう答えた。
同じ色の瞳を持つ人が居ることが嬉しかったのである。


「・・・そうか。君のお父さんとお母さんはお元気そうだね。」
老人は店の中を見つめながら言った。
その横顔をどこかで見たような気がした。
「えぇ。とても。毎日楽しそうですし。」
「そうか。」
そう言って老人は微笑んだ。


「寄って行かれませんか?」
「いや、今日は見に来ただけだから。・・・待つのには飽いてしまったから、見られて良かった。」
妙な言い方である。
晴は内心首を傾げた。


「そうですか?」
「あぁ。・・・君は、霊術院に通っているのか。」
制服を見てその人はそういった。
「はい。私と、それから二番目の兄も通っています。」
「そうか。死神の才があるのか。・・・頑張りなさい。」
「はい!」
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