蒼の瞳、紅の瞳
■ 29.秘密を守る条件

「・・・ん?草薙先生、ですよね?」
そんな睦月を見て、晴は言った。
「そうだな。」
「じゃあ、私がこの前見た先生は幻じゃなかったんだ・・・。」


『ふふ。何を見たんだい?』
「医務室に行ったときに、中から悪態をついているような声が聞こえて・・・。でも、中に入ったらいつも通りにこやかな対応だったから。何だったのだろうかと疑問に思っていたのですけれど。」


『あはは。睦月、最近素でいることが多いからじゃないか?君の素顔が全校生徒にバレる日もそう遠くないかもな。』
咲夜はニヤニヤとして言った。
「あー、南雲晴。一応このことは学院内では伏せておいてくれ。面倒だからな。」
睦月は気まずそうに言った。


「ふふふ。それは、もちろんです。こんな面白いこと誰にも言いませんよ。」
にこにこと晴は言った。
「・・・なんだか、咲夜さんと同じ系統な女な気がする。」
それを見た睦月はポツリと言った。


『そうか?まぁ、私だったら秘密にして有効に利用するぐらいのことはするだろうけど。』
「ふふふ。私はそんなことはしませんよ。ただちょっと、お願いが・・・。」
「利用する気満々だろう・・・。」
『あはは。まぁ、聞いてやれよ、睦月。秘密にしてほしいんだろう?』


「・・・なんだ?」
「先生のその綺麗な顔を写真に撮りたいなぁ、なんて。」
にっこり。
そんな擬音が付きそうな笑顔である。
「は?」


「いやぁ、先生、自覚がないのか知りませんが、女子生徒から大人気なんですよね。でも、最近週二日ぐらいしか、見かけないじゃないですか。」
「咲夜さんの目付け役をやっているからな。」
「へぇ、そうなんですか。それでですね、皆目の保養が居なくなって困っているのです。」


「知るか。」
「だから、写真、とらせてくれますよね?もちろん。」
「お前の中で決定事項なのか・・・。」
疲れたように睦月は呟いた。


「ふふふ。嫌ならもう一つ、選択肢がありますが。」
「なんだ?」
その言葉に睦月は瞳に力を取り戻す。
「そこにおられる、朽木隊長または、朽木副隊長代理のお写真でもよろしいのですが。もちろん用意するのは、草薙先生の仕事です。」


「・・・。」
その言葉に睦月の瞳から力が消え失せた。
咲夜は二人の様子を面白そうに見ているだけだ。
南雲家の面々も睦月に可哀そうな視線を向けるだけである。
「どうしますか?」


にっこり。
睦月には、その微笑が、悪魔の微笑みに見えた。
「あー、とだな・・・。ご当「断る。」ですよね。」
白哉は睦月の質問を聞く前から断った。


「もちろん、咲夜さんは「ならぬ。」ですよね・・・。」
またもや遮るように白哉は答えた。
「ふふふ。では、草薙先生?よろしくお願いいたしますね?」
何処から取り出したのか、すでにカメラを持っているのだった。
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