蒼の瞳、紅の瞳
■ 27.言葉を交わすということ

『礼などいらない。私も愉しませてもらった。それでも礼がしたいと言うなら、周防家に行ってやってくれないか。主計殿にも孫の顔を見せてやれ。瑛二殿を一番かわいがっていたのはあの方だろう?』
「それは、そうですが・・・。」


『何年たったと思っているんだ。もう、許しているさ。それに、君の子どもたちは立派に育っている。この子たちを見れば、認めてくれるだろう。蓮なんか、一年目ですでに席官レベルなのだぞ。ねぇ、白哉?』
「あぁ。修練を怠らず、最近は事務処理など副隊長の恋次にも劣らぬ。かといって自らの力を過信することもない。・・・よくやっているな。」


「っありがとうございます!僕、もっと隊長のお役にたてるように精進します!」
白哉の言葉に、蓮は飛び切りの笑顔で答える。
『ふふ。ほらね?白哉が褒めるなんてそうないことなんだぞ?』
「・・・なんだそれは。」
咲夜の言葉に白哉は不満そうである。


『君は言葉が少ないのだ。私に解っても普通の隊士には解らないものなのだぞ。ルキアにだってもっと言葉をかけてやれ。どうせルキアが副隊長になったときだって「精進するように」くらいの言葉しか、かけていないのだろう?』
「・・・。」
図星だったのか、白哉は無言である。


『いくらルキアに贈り物をしてもだな、それだけで気持ちが伝わるわけではないのだ。それに、言葉にしてくれた方が嬉しいこともあるのだからな。』
「・・・善処する。」


「・・・僕、知りたいなぁ。父さんの父上のことや兄上のこと。」
「蓮・・・。」
「そうだなぁ。俺も一度は会ってみたい。」
「燿まで。」


「きっと晴もそう言うよ。ね、兄さん?」
「そうだね。晴は絶対そう言うと思うよ。」
『ほら、子どもたちもこう言っているぞ?行き難いなら、私も一緒に行くぞ?』
「咲夜様・・・。」
それでもまだ、瑛二は迷っている様子である。


『・・・会えるうちに会っておいた方がいい。死んでから後悔しても遅いのだ。幸せな姿を見せてやれ。せっかくの親子なのだから。』
咲夜は真っ直ぐに瑛二の瞳を見て言った。


「・・・行きましょう。」
それまで黙っていた佳乃が覚悟を決めたように言った。
「佳乃・・・。」
「ふふ。いいじゃないですか。私はずっと、いつかは謝らなければと思っていたのです。それが、今なのでしょう。たとえ厳しいことを言われても、私は平気です。それは受け止めなければならないことですから。いつまでも隠れているわけには参りませんよ。」


「父さんは、僕たちのことを心配してくれているのだろうけど、僕たちも大丈夫だよ。何を言われたって、父さんも母さんも僕たちの自慢の両親だよ。」
蓮は、はっきりと言った。
「そうさ。俺たちはもう守られるばかりの小さな子供ではないんだ。何があっても、皆で乗り越えていけばいいじゃないか。」
燿もまた、はっきりとそう言い切る。


「・・・そうか。そこまで言ってくれるのなら、皆で会いに行こうか。」
『ふふ。決まりだな。』
咲夜は嬉しそうに笑う。
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