蒼の瞳、紅の瞳
■ 26.試練の結果

「それで、結果はどうでしたか?」
佳乃が微笑みながら聞く。
『うん。二人は上手くいったようだ。まぁ、それを見ても当時の私はよく解らなかったのだが。でも、白哉が好きだと自覚してからはそれがよく解った。恋とは、愛とは、そういうものなのだな。』


「それはようございました。」
『私は二人の結婚を認め、二人は結婚した。男は家から籍を抜いてやった。女中には花嫁道具を贈った。二人の頑張りは素晴らしいものだったから。5年の期限を設けたのに、二人は1年で自立した。自分で働いて、家と土地まで手に入れていたのだ。人の本気と言うものはすごいものだな。』


「ふふふ。」
『それが、君たちの両親だ。なぁ、瑛二殿に佳乃?』
「えぇ。」
「そうでしたね。」


「それはつまり・・・。」
「父さんが元貴族と言うことですか?」
燿と蓮が目を丸くしていった。
『そうだ。』


「母さんが女中だったのは知っていましたが・・・。」
『ふふ。・・・そうか、蓮の瞳はおじい様に似ているのだったな。確かに、似ている。』
「紫色の瞳・・・。」
白哉は何かを思い出したようである。
その表情が驚きに変わった。


「では、瑛二殿は主計殿のご子息と言うことか?あの周防家の?」
「はい。私は周防家の前当主周防主計が二男にございます。そして現周防家当主、周防慶一は、私の実の兄です。」
「そうだったのか。慶一殿が弟の話をされたことがあるのだが、姿を見たことがないので不思議に思っていたのだ。そういう事情があったのか。」
「はい。」


『慶一殿は君たちを気にかけているぞ。いい加減、顔を見せに行ってやれ。もちろん、蓮と燿、晴の三人を連れてな。』
「しかし、私たちはすでに流魂街の民にございます。そう簡単に貴族の屋敷の門をくぐることなどできません。それに、私は家を捨てた身ですから。」


『慶一殿は会いたがっていたぞ。あの方は君たちを応援しておられたのだから。瑛二殿を周防の籍から外すことが出来たのも、慶一殿の協力あってこそだ。まぁ、ちょっと銀嶺お爺様を利用したのも事実だが。』
「・・・何をしたのだ。」
呆れたように白哉は言った。


『ちょっと、繋ぎを作っただけだ。銀嶺お爺様に慶一殿について話したのだ。お爺様のことだから私が誰かの話をすれば必ず相手を調べるだろう?ましてや、それが男の話なのだから。』
「そうだな。」


『慶一殿は笛の名手でな。お爺様なら興味を持つであろうと思ったのだ。事実、おじい様は興味を持って、慶一殿との交流を今もお持ちだ。さすがの主計殿も朽木の者と直接繋がりがある者の意見を無碍にすることも出来なかったようだな。』
咲夜は悪戯が成功したときのように笑った。


「我が祖父すらも咲夜の掌の上、という訳か・・・。」
白哉はそれを見て苦笑する。
『やだなぁ。お爺様が私に甘いだけだよ。きっとすべてを知った上で慶一殿との付き合いを続けておられる。まぁ、慶一殿の笛の音がそれほど素晴らしいものだからだろうけどね。』


「そんなことまでしていただいたのですね。本当に、何とお礼を言ったらいいか・・・。」
瑛二が困ったように言った。
そんな彼に咲夜は笑う。
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