蒼の瞳、紅の瞳
■ 25.二人を試す

『それで、反対されて二人は引き裂かれそうになったのだ。男は悩んだ。そして、私を頼ってきたのだ。それも、見合いの席でだぞ?普通の姫なら怒り狂う所だ。』
「まぁ、そうでしょうね。」
「咲夜が見合いをしたというのは初耳だな。京楽との見合いも断ったと聞いていたが。」
白哉が意外そうに言った。


『あはは。京楽と見合いをするなど勘弁だ。・・・まぁ、断れないわけではなかったんだ。でも、さすがに見合いを断り続けているのも限界でな。家臣に相当詰め寄られてしまったから。形だけでも見合いをすることにしたのだ。』
「・・・それは、私にも覚えがあるが。」
白哉は苦々しい顔で言った。


『ふふふ。なんだその顔は。・・・それで、私はその男と女中の仲を知っていたからな。それなら見合いは、なかったことにされるだろうと踏んで見合いをしたのだ。そしたら、助けてほしいと言われてな。「何だってする。家を捨てても構わない」とまで言われては助けたくもなるだろう?』


「ふふふ。あの時、咲夜さまは大笑いしておりました。」
思い出したように佳乃は微笑む。
『あぁ。面白かったからな。』
「それで、手を貸したのか?」


『うん。本音を言うと私は退屈だったのでな。手を貸すことにした。見合いの席で見合い相手の愛を取り持つことになるなど思いもしなかったからな。』
「退屈しのぎだったのですね・・・。」
呆れたように瑛二は言った。


『ふふ。だって、漣家との縁談は貴族としては喉から手が出るほど欲しいものだろう?個人の意思はともかく。』
「そうですね。」
瑛二は苦笑いである。


『それを蹴って他の女、それも女中と駆け落ちしようなどと考えているのだぞ?そしてそれをこの私に正面から伝えてくるのだから。面白い男だと思った。度胸もあるしな。』
「お前はそういう奴だよな。俺がお前に素を見られた時も、面白そうに大笑いしていた。」
睦月がしみじみと言った。


『まぁね。爽やかで物腰柔らかな医師の素顔があんなだとは思わなかったからな。・・・それで、私は二人を助けた。二人に屋敷を与えてかくまったのだ。5年と言う期限付きでな。』
「期限付きで?」


『あぁ。ずっと匿っているわけにもいかないからな。5年で自立しろと言ったのだ。貴族の男が流魂街で暮らすなど相当苦労をするだろう?せっかく私が取り持ったのだからその後不幸になられては困る。だから、5年で自立して、それでもまだ相手と共にあることを選ぶならばよし。別れて男が家に戻ってもよし。女中が漣に戻ってきてもよし。まぁ、私はどうなろうと構わなかった。ただ、あの時の私には愛とは一体何なのか、それがどれほどの原動力になるのかよく解らなかったから、二人で試したのだ。』
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