蒼の瞳、紅の瞳
■ 24.女中と見合い相手

「お待たせいたしました。こちらが烏龍茶にございます。それから、胡麻団子。朽木様には七味唐辛子味のおかきにいたしました。蓮から、辛いものがお好きだと聞いたので。」
瑛二と燿が茶と菓子を運んできた。
「いただこう。」
『いい香りだ。』
「そうだな。」


香りを楽しんでから、咲夜は烏龍茶を口に含んだ。
『!!烏龍茶とはこんなにおいしいものなのだな。』
「はい。きちんと淹れれば、どんな茶葉でも大抵美味しくなりますからね。」
『胡麻団子も美味しい。』
「それはようございました。」


『白哉、そのおかき一つくれ。』
「あぁ。なかなか良い味だ。」
そう言って白哉はおかきをつまんで咲夜の口元に持っていく。
咲夜は当たり前のように口をあけてそれを口に含んだ。


「あらあら。」
それを見た佳乃は微笑ましそうに二人を見る。
「・・・なぁ、南雲。この人たち本当に困るよな。」
睦月が呆れたように言った。


「あはは。そうですね。」
「自覚がないのはご当主も同じだよなぁ。」
「確かに。」
蓮も苦笑しつつ答える。


「それで、父と母と先生は、どのような縁があるのですか?」
蓮が興味深そうに言った。
燿も興味津々だ。
『ふふ。佳乃はね、さっきも言ったとおり、漣家の女中だったのだ。』


「えぇ。咲夜さまはほとんどお屋敷におられないのに、私どものことをよく見ていてくださいました。」
『それは、当然のことだ。私のために働いてくれているのだからな。』
「それで?」


『ある日、ある男が私を訪ねてきた。聞けば、ある家の次男坊だという。まぁ、簡単に言うと、見合いを持ってきたのだ。まったく、驚いたよ。見合いの本人が見合いを持ってくるのだから。』
咲夜はそう言ってチラリと瑛二を見る。


「その男は自分ではなく、自分の兄が見合い相手だと思っていたのです。」
瑛二は苦笑している。
『その男は、その時にある女中に出会ってな。一目ぼれだったのだろうな。その時は気が付かなかったのだが、ある時二人の逢瀬を目撃してな。その男が女中に言い寄っているだけかとも思ったのだが、どうもその女中も心を奪われていたらしい。でも・・・。』


「でも?」
『男は上流貴族の出なのだ。私に見合いを持ってこられるほどの力を持っている、ね。』
「なるほど。反対されたわけだ。」
睦月が言った。


『そうだ。貴族と言うのは閉鎖的だからな。婚姻は貴族同士という暗黙の了解がある。だから白哉と緋真さんの結婚も相当反対された。白哉の霊圧を封じて閉じ込めるくらいに。』


「待て。・・・なぜそこまで知っているのだ。」
白哉は怪訝そうに問うた。
『あはは。大叔父様が、見ていたらしいぞ。朽木家の中で何か起こっていることを聞き及んだらしい。』


「・・・悪趣味な。」
白哉は軽蔑したように言い捨てる。
『ははは。私の大叔父がすまないな。』
「全く、あの男は・・・。」
[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -