蒼の瞳、紅の瞳
■ 23.苦労が絶えぬ

『何か言っていたのか?』
「羨ましくなるくらい仲睦まじい様子だったと。それから色々な話が聞けてますます死神になりたいと思ったとも。」
『ふふ。そうか。本当は私と浮竹だけだったのだがな。白哉が来たから巻き込んだのだ。ねぇ、白哉?』


「そうだな。私にはそのつもりはなかったのだがな。」
『なんだかんだ言いつつも君もちゃんと参加していたじゃないか。』
「ははは。俺も見てましたけど、ご当主はなかなか楽しそうでしたよ。それに、後で浮竹隊長から聞いた話ですが、あの時ご当主が持ってきた書類は、わざわざ隊長が自ら運ぶものではなかったそうではありませんか。」
睦月がからかうようにいった。


「・・・。」
事実だったのか、白哉は返答に詰まる。
『へぇ?そうなのか?それなのにわざわざあそこまで来たわけだ。いつも講師の依頼を蹴っている君が。』
「全く、過保護ですねぇ。」
「・・・五月蝿いぞ、睦月。」
白哉が拗ねたように言う。


「ふふふ。咲夜さまは愛されているのですね。お幸せそうで何よりです。」
佳乃はそう言ってほほ笑む。
『うん。幸せだ。実はな、子が出来たのだ。最近分かったことだが。』
「あらまぁ。それはおめでとうございます。あとで妊娠中の体によいお茶をお包いたしましょう。」
『そうか。それはありがたい。あれやこれやと、白哉が五月蝿いのだ。全く、心配性なんだから。』


「それは、咲夜さんだからしかたない。お前は本当に自覚がないからな。この数週間、お前の目付けをやってそれがよく解った。」
睦月は疲れたように言った。
「あはは。それは僕もそう思います。さすがに六番隊の隊士にそのような下心を持つ者はおりませんが。」


『何だそれは。私は普通にしていただろう。』
「は?あれが普通なのか?誰彼かまわず抱き着いていただろう・・・。お蔭でどれほどの男が心に傷を負ったか・・・。」
「ほう?そのようなことをしていたのか。」
睦月の言葉に白哉の目が細められる。


『いや、それは、だな。別に、誰彼かまわず、抱き着いていたわけでは・・・。』
「ほう?」
『その、ちょっと、抱き着いただけだ。』
「そうか?浮竹隊長にはくっつくし、京楽隊長には抱き着かれるし、吉良たちにもすぐに抱き着くし、その辺の隊士たちを褒める時にも抱き着くし。可愛い子を見つけると頭を撫で始めるし・・・。」


「・・・はぁ。」
睦月の話を聞いた白哉は深いため息を吐いた。
「ふふふ。朽木さまも苦労なさっておいでなのですね。」
「あぁ。苦労が絶えぬ。」
「そりゃあ、過保護にもなりますよね、ご当主?」


「そうだな。睦月、これからはすべて報告しろ。浮竹はともかく、京楽が抱き着いたらすぐに引きはがせ。」
「ははは。無茶なこと言いますねぇ。相手は隊長ですよ?」
「・・・睦月。」
じろり、と白哉が睨む。
「はいはい。解りました。だからそんな目で見ないでください。俺の寿命が縮みます。」
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