蒼の瞳、紅の瞳
■ 21.琥珀庵

『なぁ、白哉。』
「何だ?」
『次の非番、蓮の家の茶屋に行かないか?』
「蓮の?」
『あぁ。流魂街で茶屋をやっているそうだ。色々な茶と、菓子があるらしい。』


「行きたいのか?」
『うん。行きたい!』
「ならば連れて行ってやる。」
『本当か?』
白哉の言葉に咲夜の目が輝いた。
「あぁ。」


『じゃあ、蓮も連れて行こう。案内してもらった方がいいだろう?』
「そうだな。あれは最近ずっと仕事と修練ばかりだ。たまには家に帰らせることも必要だろう。」
『ふふふ。楽しみだ。』


そんな会話をしてから一週間後。
蓮は朽木夫妻を伴って流魂街に来ていた。
睦月もそれに付いて来ている。
この男は酒も好きだが、甘いものも好きなのだ。


『ふふふ。流魂街も久しぶりだな。』
「あまりふらふらするな。はぐれたらどうする。」
白哉はそう言って咲夜の手をとる。
『いいじゃないか。はぐれても君が見つけてくれるのだろう?』
「当然だ。」


「はいはい。お二人さん、こんな往来でイチャつかないでくださいよ。それでなくても、お二人は目立つんですから。」
それを見た睦月が呆れたように言う。
「あはは。そうですね。さっきから視線が集まってきていますよ。・・・さて、着きました。ここです。」


蓮に言われて咲夜たちはその建物を見た。
琥珀庵。
看板がかかっている。
それほど広くはなさそうだが、小奇麗で温かみのある店だ。
木のぬくもりが溢れている。


『ふふふ。いい雰囲気だな。』
「あぁ。そうだな。」
「そういって頂けると兄が喜びます。この店を設計したのは兄なので。」
『へぇ。お兄さんは今日、いらっしゃるのか?』
「はい。きっと緊張していると思いますけど。朽木隊長とその奥方が来ると伝えてあるので。さぁ、どうぞ。」


「「「ようこそいらっしゃいました。」」」
蓮が扉を開けると、三人に出迎えられた。
「本日はこのような場所に足をお運びいただきまして・・・。」
蓮の父上だろうか。
頭を深く下げたまま、挨拶をする。


『頭を上げてください。いつも通りで結構ですから。』
「しかし・・・。」
「構わぬ。頭を上げてくれ。私たちはただの茶を楽しみに来ただけなのだ。」
白哉がそう言ってもなかなか頭を上げようとしない。


『ふふ。蓮、君からも言ってやってくれ。』
「あはは。すみません。ほら、父さん、母さん、兄さん、顔を上げて。朽木隊長たちもこう言ってくださっているのだから。」
蓮の言葉に漸く頭があげられる。


あれ・・・?
この女性をどこかで見たことがあるような・・・。
それに、この男性は・・・。
『君は・・・。』
「咲夜、様・・・。」
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