蒼の瞳、紅の瞳
■ 19.沈黙の時間

睦月たちの前から連れ去られた咲夜は隊主室に連れてこられていた。
椅子に座る白哉の膝の上に座らされている状況である。
後ろから抱きこまれて。


『あの、白哉?これじゃあ重いだろう。』
「重くなどない。」
白哉の顎が肩にのせられているせいで、彼の声が耳元で聞こえる。


『というか、動けないんだが。』
「動く必要もないだろう。」
放す気はないらしい。
いや、白哉が良いのなら、私も構わないのだが。


『君は意外と甘えただよな。』
「・・・そうか?」
自覚はないらしい。
『うん。昔から、こんなふうにやたらと触れてくるときは、大体甘えている時だ。私はそれが可愛くて仕方がないのだ。』
笑みを零しながら咲夜は言った。


「・・・。」
拗ねたような気配がする。
『どうかしたのか?何か、あったのか?』
「何でもない。気にするな。」


素直じゃないなぁ。
こうやって甘えてくるときは何かしら理由があるのだが。
『ふぅん?』
これ以上は、口を開いてはくれなさそうだ。
少々待たねばならないな。
咲夜は早々に諦めて、力を抜いて白哉に体を預ける。


心地よい、沈黙。
私はこの時間が好きだ。
話さずとも、そばに居るというのがよく解るから。
心が通じ合っているのが、解る。


浮竹や京楽とも、こんな時間がある。
言葉だけでは埋められない何かを埋めるような時間。
相手の心と深いところで同調するような、そんな時間。


特に、白哉とのこの時間が私は大好きだ。
彼は口数が多い方ではない。
でも、この沈黙の時間が、彼の表情や温もり、瞳に映る心情から、雄弁に彼の心を伝えてくれるのだ。


今の白哉から伝わってくるのは、小さな不安。
さて、彼を不安にさせるものとは一体・・・?
まぁ、私に関することだろうな。
でもそうすると、心当たりがありすぎて何だかわからない。
[ prev / next ]
top
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -