蒼の瞳、紅の瞳
■ 18.医者としての意見

「睦月。」
蓮と話していた睦月に白哉が声を掛けた。
「はい。何でしょう?」
「咲夜に付いているのは慣れたか?」


「えぇ、まぁ、慣れました。ご当主の過保護さと甘やかしにも。」
「・・・。」
其れの何が悪いのだ、とでも言うように白哉は無言で睦月を見る。
この当主は顔全体を見るよりも、瞳を見た方が、感情が分かりやすい。


「ははは。何も悪いところなどありませんよ。咲夜さんもそうやって甘やかされるのが好きなようですし。」
『睦月!?な、何を言っているんだ!』
「事実だろ?それから、まだ安定期になって居ないので、精神的にも不安定になることもあります。なるべく傍に居てあげてください。これは、医者としての意見です。」


「解った。そうしよう。」
白哉はそう言って咲夜を抱き上げた。
『うわ!?』
「・・・蓮。私は休憩に入る。恋次にもそう伝えておけ。」


「はい。ごゆっくり。隊長への書類は恋次さんに回しておきますので。」
蓮の言葉を聞いて白哉はくるりと背を向けて歩き出す。
『ちょっと、白哉!?降ろしてくれ。私は自分で歩けるぞ。』
「睦月がそばに居ろと言った。」
白哉は愉しそうである。


『それは、そうだが。抱き上げろとまでは言っていないぞ!大体、なんでこういう時だけ素直に人の言うことを聞くんだ!』
「そう暴れるな。落ちたらどうする。」
『じゃあ降ろしてくれ。』
「断る。」


『もう。睦月!君が余計なことを言うからだ!!覚えていろよ!』
二人の言い合いを見つめていた睦月に咲夜はそう叫んだ。
「大人しくせぬか。それにあまり五月蝿くするな。迷惑であろう。」
すかさず白哉からの注意がはいる。


『白哉のせいだろう!?』
「そうか?」
白哉はしれっと答える。
『・・・。もう!白哉の莫迦ぁー!!!』


「・・・先生って、朽木隊長には敵わないんですね。」
蓮は小さくつぶやいた。
「あぁ、まぁ、な。ご当主も咲夜さんには敵わないけどな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。」


「なんだ。お互いにお互いが、弱点なんですね。」
「はは。そうだな。さてと、俺はそのへんをぶらぶらしてくる。休憩が終わるころに戻る。」
「はい。解りました。」


「じゃあな。たぶんこれから、毎日のように六番隊に顔を出すだろうから、よろしくな。」
「はい。では、僕もこれで。」
二人はそう言って別れたのだった。
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