蒼の瞳、紅の瞳
■ 17.教え子の成長

「あれ?先生?」
睦月に引きずられて六番隊にやってきた咲夜に蓮が声を掛けた。
『蓮!!久しぶりだな。元気か?』
「はい!修練も進んでいますよ。黒刃と白刃が相手をしてくれるので。」
『そうか。それはよかった。』


「先生はご懐妊なさったそうですね。おめでとうございます。」
『あぁ。ありがとう。』
「あれ?でも、休隊中では?」
『まぁ、そうなんだが。邸に一人で居るのもつまらないだろう。』


「それもそうですけど。朽木隊長はご存じなんですよね?」
『うん。ちゃんと白哉の許可も取ってある。』
「そうですか。それならいいのですが。あまり朽木隊長に心配を掛けないようにしてくださいね?」
『あはは。うん。』


「というか草薙先生・・・?」
蓮は睦月を見て不思議そうな顔をした。
「久しぶりですね、南雲君。」
爽やかモードで挨拶をする睦月。


「はい。お久しぶりです。草薙先生はどうしてここに?」
「僕は今、朽木家に雇われていてね。咲夜さんの目付け役みたいなものをしているんです。」
「そうでしたか。では、霊術院の仕事は辞められたのですか?」
「週二日は霊術院にいますよ。」


「そうだったんですか。僕、この間先生に会いに行ったのですけど、今は居ないと言われまして。」
「えぇ。それはすみません。最近何かと駆り出されることもありまして。四番隊で仕事をしていたこともあったものですから。」


『・・・睦月、それ、やめないか。』
和やかに会話をする二人を静かに見ていた咲夜は睦月の爽やかモードを指摘した。
「・・・?」
咲夜の言葉に蓮は首を傾げる。


「あー、まぁ、そうだな。そのうちバレるだろうし。・・・南雲、俺、実はこんな感じなんだ。」
「!?」
素で蓮に話しかけた睦月を見て、蓮は大きく目を見開いた。


『あはは。いい反応だな。』
「ということは、えーと・・・草薙先生の今までの表情はすべて作り物?」
「まぁ、ほとんどそうだな。俺は、あんなににこやかな人間じゃないし、優しくもない。」
『あはは。自覚しているのか。』
「五月蝿いぞ。」


「・・・そうですか。」
ポツリと呟いて落ち込む蓮。
「あぁ、でも、お前に言った言葉は嘘じゃない。心配していたのは本当だ。面倒だと思って居たのも事実ではあるが。」


『そうそう。睦月はね、表情は変えられても、嘘はつかない。それは私が保障しよう。』
「そう、ですよね。・・・草薙先生がどう思って居ようと、先生の言葉に助けられたのも事実ですし。気にしないことにします。」
「あぁ。そうしてくれると助かる。」


「咲夜?・・・来ていたのか。」
三人で話していると、白哉が現れた。
『白哉!』
咲夜はそう言って白哉に抱き着いた。
白哉はそれをふわりと受け止める。


「相変わらず、相思相愛ですねぇ。」
それを見た蓮が呟く。
「あぁ。俺はここ最近、毎日あの二人のそばに居るんだ・・・。」
睦月はげんなりしたように言った。


「あはは。先生が六番隊に居たときもこんな感じでしたけどね。」
「仕事場でもこうなのか・・・。」
「えぇ。隊士たちも最初は驚いていましたけど。今はもう、それが当たり前になっているんですよね。」


「・・・仕事の邪魔にはならないのか?」
「なりませんね。むしろ仕事の効率は上がっているのではないでしょうか。先生が来ると隊長は休憩をとられるので、その時間をできるだけ長くすることが出来るように、隊士たちも頑張っているのですよ。僕たちが隊長のためにできるのはそのくらいなので。」


「なるほど。みんなで甘やかしているのか。」
「あはは。そうとも言いますね。」
蓮はそういって朗らかに笑う。
それを見た睦月は、こいつはこんなに笑えるようになったのか、と己の生徒の成長感じたであった。
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