蒼の瞳、紅の瞳
■ 16.名前の呼び方

「なぁ、俺は、お前を何と呼べばいいんだ?」
睦月が咲夜とともに行動するようになって、一週間が経った。
今は散歩中である。


霊術院の医師の仕事は週に二日ほど行けばいいらしい。
残りの五日間は、弥生が引き受けてくれるそうだ。
その二日以外はずっと咲夜とともに行動する。
睦月が仕事に行っている間は、咲夜は六番隊か十三番隊に預けられる。


どちらも駄目なら四番隊。
それも駄目なら三番隊か十番隊に連れていけとの白哉の指示も受けている。
それから、十一番隊と十二番隊には絶対に近づけるなとも。


『何でもいいんじゃないか?』
「いや、だって一応、お前は俺の主だろう。話すときも敬語の方がいいのか?」
『君を雇っているのは白哉だ。だから私に敬語を使う必要はない。好きに呼べ。あぁ、でも咲夜と呼び捨てで呼ぶのはお勧めしない。』


「何故だ?」
『千本の桜が散る。』
「・・・絶対呼ばない。」


『ははは。私を咲夜と呼んで怒られない男は山じいと銀嶺おじい様、それから私の大叔父くらいだろう。』
「恐ろしい面子だな・・・。」
『まぁ、普通にさん付けとかでいいんじゃないか?』


「・・・咲夜さん?」
『・・・。』
睦月の呼び掛けに、咲夜は黙り込んだ。
「いや、黙るなよ。」
『すごく違和感があるな。』
「俺にどうしろと・・・。」


『なんかそう呼ばれると、猫を被った君に呼ばれている気がしてな・・・。でも君、最近猫被ってないよな?』
「その必要がなくなったからだ。お前を含め、この性格でも普通に付き合ってくれる人たちが居るからな。」


『それはよかったな。』
「まぁな。」
『ま、いいか。私が慣れればいい話だな。』
「そうしてくれ。」


「そういえば、お前は悪阻とかないのか?」
『うーん・・・。気持ち悪くなることはないな。いつもより眠くて、体が重いだけだ。』
「そうか。まぁ、それも安定期に入るまでだ。他に何か体調の変化はあるか?」
『いや。特には。でも・・・。』


「何だ?」
『・・・。』
言いづらそうに咲夜は黙り込んだ。
「言わないとご当主に報告するぞ。」
『それはやめてくれ。邸から出られなくなってしまう。』
「じゃあ言え。」


『・・・白哉が近くに居た方が、精神的に安定しているのだ。』
「なんだ。惚気か。」
『なんだとは何だ。それに惚気ではないぞ。』
「どう見ても惚気だ。さてさて、それじゃあ、六番隊にでも行きますかね。」
睦月はそう言って咲夜の腕をとり、六番隊へと足を向けたのだった。
『ちょっ!?人の話を聞け!こら、睦月!!!』
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