蒼の瞳、紅の瞳
■ 15.過保護

「誰も彼も咲夜、咲夜と。咲夜は私のものであるのに・・・。」
先ほどからルキアとともに菓子を頬張っている咲夜を見ながら、白哉は言った。
『あはは。まぁ、そう心配せずとも、大人しくしているさ。でも、お願いがあるのだ。』
「何だ?」


『死神の仕事はしないから、護廷隊に顔を出すくらいいいだろう?』
「・・・何故だ。」
咲夜の言葉に白哉は渋い顔をする。
『そんな顔するなよ・・・。だって、寂しいじゃないか。朽木家に居ても、白哉もルキアも仕事があるのだぞ?浮竹や京楽だってそうだ。私に一人で、あの邸で待っていろと言うのか?』


「それは・・・。」
『なぁ、いいだろう?』
ねだるような声に、白哉の心は揺れる。
「だが・・・。」


『そんなに心配なら、六番隊に居る。それか、雨乾堂。これならいいか?』
白哉の心の揺れを読み取ったかのように咲夜はそう言った。
「・・・いいだろう。ただし、絶対に無理はするなよ。隊士に稽古をつけるなど以ての外だ。」
『解っているさ。』


「それから、睦月をそなたに付ける。」
『睦月を?』
「あぁ。一人では出歩かせられぬ。それに咲夜に何かあってもあれが居れば問題ないだろうからな。護身用に鬼道と瞬歩も覚えさせた。その辺の虚などは問題なく相手にできるほどの腕前にはなっている。」


睦月・・・。
最近見かけなかったのはそのせいか。
この短期間で相当スパルタな指導を受けたに違いない。
彼は、医者だったはずだがなぁ。


・・・可哀そうに。
容赦なくこき使われているではないか。
まぁ、治療ができる程度には器用に霊圧の制御ができる奴だから、教えれば鬼道もすぐにできそうだが。


『白哉ってば過保護だなぁ。』
「それが嫌なら、邸の外には出さぬぞ。」
白哉の目は本気だ。
受け入れなければ、邸に閉じ込められてしまうな。
咲夜は内心苦笑する。


『・・・わかった。一人では出歩かない。ちゃんと睦月と居る。だから、私は六番隊か、雨乾堂か、三番隊か、四番隊か、十番隊に居る。』
「八番隊を忘れてないかい?」
京楽が茶化すように言った。
『京楽がちゃんと仕事をするなら行ってやろう。』


「・・・増えているではないか。」
呆れたように白哉は言った。
『このくらいいいだろう。ちゃんと睦月も連れて行くさ。』
「それならよい。」


「なんだかんだ言っても、白哉が一番過保護じゃないか。」
二人のやり取りを見ていた浮竹はそう呟いた。
「あはは。そうだねぇ。僕らなんかじゃ相手にならないよ。」
「兄様は、咲夜姉さまがそれほど大切なのです。」


「でも、咲ちゃんが相手だと朽木隊長も譲歩しちゃうんだね。」
「白哉も漣には甘いのさ。あんな風に言われてしまっては、断ることもできないだろう。」
苦笑しつつ浮竹はそう言った。


「確かにねぇ。家に一人で居るのが寂しいだなんて言われたら、閉じ込めることもできないよね。」
「それが、大切な妻なら尚更だな。本当は一番そばに居てやりたいのは白哉だろうから。」


「・・・兄ら、聞こえておるぞ。」
白哉が横目で睨みながら言った。
『あはは。なんだ、図星か?本当に君は、可愛いなぁ。』
咲夜はそう言って白哉の頭を撫でる。
「・・・。」


「・・・まぁ、あんな漣に勝てる奴はそうはいないよな。」
「だね。」
「流石の兄様も、咲夜姉さまには敵いませぬ。」
不満げに黙り込んだ白哉に、三人は苦笑するのだった。
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