蒼の瞳、紅の瞳
■ 12.愛の印

大叔父である十五夜の騒ぎから数日後。
あの後、彼は、響鬼に引きずられるようにして霊王宮へと帰って行った。
なんだかんだで、白哉とは仲良くなっていた・・・気がする。


『烈さん、いますか?』
今日の咲夜は四番隊に来ていた。
流石に眠りすぎだと浮竹に心配されて、咲夜は卯ノ花のもとへやってきたのだ。
実際は、咲夜が渋ったために、最終的には隊長命令と言う形で雨乾堂を追い出されたのだが。


「咲夜さん?」
休憩中だったのか烈さんはお茶を飲んでいた。
『よかった。烈さんに診察してもらおうと思って来たのです。』
「診察?どこか具合が悪いのですか?」
咲夜の言葉に卯ノ花の表情が心配そうなものになる。


『いや、具合が悪いというわけでは・・・。とりあえず、あそこで、私を診てくれますか?』
そう言って咲夜が指さした部屋に卯ノ花は咲夜の目的を理解した。


一刻ほど後、咲夜は六番隊の隊主室を訪れた。
「咲夜か。」
咲夜に気が付いた白哉は仕事の手を止めて、長椅子へと移動する。
咲夜が隊主室に来るということは休憩の時間ということだからだ。


『白哉。』
咲夜は白哉の名を呼ぶと、飛びつくように抱き着いてきた。
「・・・どうした?何かいいことでもあったのか?」
ふわり、とそれを受け止めつつ白哉は問う。
『ふふふ。・・・うん。』
咲夜は頷いて白哉の胸に顔を埋める。


「・・・私に話してはくれぬのか?」
頷いただけで話す様子の無い咲夜にそう声を掛ける。
『いや、君に一番に話そうと思ってな。誰にも見つからないように隠れながらここまで来たのだ。』


「それほどのことなのか?」
『あぁ。・・・さっき、烈さんのところに行ってきた。』
「卯ノ花隊長のところに?」
『うん。あのね・・・。』
咲夜はそこで言葉を止める。
そして、腕の中から白哉の目を真っ直ぐに見つめた。


『・・・子が、できた。』
思いもよらない言葉に白哉の思考は一時停止した。
「・・・。」
『もちろん、私と白哉の子だ。』
咲夜の言葉を理解した瞬間、白哉の体に、震えが走った。


「本当か・・・?」
思わず腕に力が入る。
『あぁ。烈さんに診てもらったのだから、間違いない。』
咲夜はそう言って幸せそうに微笑む。


「・・・そうか。」
そういって、白哉は咲夜を抱き寄せた。
「・・・ありがとう、咲夜。」
『礼を言うのは私の方だ。また、大切なものが増える。』
「そうだな。」


『ふふふ。震えているぞ。』
「・・・嬉しいのだ。そのくらい許せ。」
『白哉。顔を見せてくれ。』
「今は、駄目だ。」


きっと、自分は今、情けない顔をしている。
泣きそうな、顔をしている。
『いいから、見せてくれ。』
咲夜はそう言って、白哉と距離をとる。
白哉の表情を見て困ったように微笑み、そして、彼の頬を両手で包み込んだ。


『白哉、愛しているよ。』
「私もだ。私も咲夜を愛している。」
『あぁ。知っている。君は、私を受け入れてくれた。私に安心を与えてくれた。私に愛する喜びを与えてくれた。私を、愛してくれた。私は、幸せだ。ありがとう。』
咲夜はその澄んだ瞳を潤ませながらそう言った。


「それは、私の科白だ。」
白哉はそう言って、微笑む。
「私は、幸せ者だな。・・・そなたのお蔭で、幸せだ。」
『ふふふ。そうか。大事に育てよう。』
「あぁ。」


『性別はどちらだろうな?』
「どちらでも構わぬ。元気に生まれてくれれば良い。」
『それもそうだな。』
そうして二人は、また微笑みあった。
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