蒼の瞳、紅の瞳
■ 11.君のもの、私のもの

「・・・いつまで手を握っているのだ。」
その様子を見ていた白哉が不機嫌に言った。
「いいじゃないか。」
そう言ってふざけたように咲夜に抱き着く。


「私の咲夜に何をする。」
それをみた白哉の声が低くなる。
「咲夜は咲夜だ。君のものじゃない。」
『ふふふ。大叔父様。私は白哉のものですよ。』


「なに!?君はものなんかじゃないぞ!!」
『白哉は特別です。私が白哉のものである代わりに、白哉は私のものなのですよ。ねぇ、白哉?』
十五夜の腕の中からするりと抜けだして、咲夜は白哉に抱き着いた。


「そうだな。」
自分のもとに抱き着いてきた咲夜を白哉は満足そうに見つめる。
「・・・何故、この男なのだ?」
『ふふふ。実は私にもよく解りません。・・・でも、私は白哉がいいのです。たぶん、白哉に初めて会った時からずっと。』
咲夜はそう言って幸せそうに笑う。


「なんだそれは。理由がわからないのか?」
十五夜は不思議そうに言った。
「ふふ。そうですね。理由など解らないものですよ。私もそうです。」
天音は咲夜に同意した。


「・・・君も解らないのか?」
それを聞いた十五夜は、そう言って白哉を見る。
「そうだな。ただ、私は咲夜が良いのだ。そう思ったら、手を伸ばさずにはいられなかった・・・。」
そう言った白哉の表情は柔らかい。


「・・・そんな顔になるのか。」
白哉の表情に十五夜は目を丸くする。
「あら、白哉様は咲夜殿の前では表情が柔らかくなるのですよ?」
叔母上がからかうように言う。


「別にいいではないか・・・。」
にこにことほほ笑む叔母上から目をそらして白哉はそう呟いた。
『ふふふ。白哉ってば、可愛いな。』
「・・・この私に対して可愛いなどと言うのは、咲夜くらいだ。」
『だって、君は昔から可愛いもの。ずっと、私の特別だ。』


「特別か。」
『あぁ。』
「咲夜も私の特別だ。」
『ふふ。そんなこととっくに知っている。』
「そうか。」
そう言って二人は微笑みあう。


「咲夜は、今、幸せか?」
『はい!白哉が傍に居ます。大切なものもたくさんできました。』
「・・・そうか。それならいい。」
『大叔父様にも大切な方が出来るといいですね。』


「そうですね。十五夜殿には、しっかり者の奥方が居た方がいいかも知れません。」
「・・・できるだろうか?」
『ふふ。できますよ。』
「早く出来てもらわねば困る。今日のように乗り込まれては迷惑なのでな。」


「君、酷い奴だな。もう少し、年上を敬ったらどうだ?」
「誰かを尊敬するのに、年齢など関係ない。」
「・・・つまり僕は、君には尊敬されていないということか。」
「そうだな。」
「はっきり言ってくれるね・・・。」


「大丈夫です。貴方を尊敬していない人など幾らでも居ます。」
響鬼はそう言い切る。
「・・・全然慰めの言葉になっていないじゃないか。」
「慰めの言葉ではありませんからね。」
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