蒼の瞳、紅の瞳
■ 10.心からの謝罪

「僕は、どうすれば・・・。」
「あぁ、もう。面倒な人ですね。仕事ができるだけで、本当は頭悪いんじゃないですか?さっさと咲夜さまに謝ってしまいなさい。そして、本当に咲夜さまが大切ならば、これから先は必ず力になると約束でもすればいいんです。もちろん、口先だけでない約束を、ですよ。」


謝る。
そうか。
僕はそれすらしていないんだ。
咲夜や姉上を可哀そうに思って居るだけだった。


何もしなかったのは僕なんだ。
咲夜が泣いていても、姉上が泣いていても、僕は見ていただけだった。
何もできないと、諦めてしまった。


だが、どうだ?
天音も、朽木白哉も咲夜に手を伸ばした。
苦しんでいる咲夜を本当に救ったのは、きっと、そういう人たちで、咲夜が笑って生活できるようになったのも、この人たちのお蔭なのだ。
僕は何もしなかった。
理由をつけて、屁理屈をこねて、自分を守っていただけなんだ。


「・・・咲夜。」
十五夜はかすれた声で咲夜の名を呼んだ。
『・・・はい。』
咲夜は涙をぬぐって十五夜の方を向いた。


「ごめん。助けなくてごめん。手を差し伸べることもしなくて、ごめん。何もやらなくて、ごめん。君を大切にしなくて、ごめん。自分勝手でごめん。君を縛り付けて、ごめん。」
涙が一筋、十五夜の瞳から零れ落ちた。


『大叔父様・・・?』
「でも、これだけは知っていてほしい。僕が君を大切にしようとしていたのは本当だ。僕のもとに来れば、君は何不自由なく、生きることが出来ると思った。・・・それは、君を縛ることになってしまったけれど。」


『はい。大叔父様。・・・私も貴方に酷いことを言いました。お許しください。』
「いや、いいんだ。君が謝ることじゃない。・・・咲夜、手を貸してくれるかい?」
そういわれて、咲夜はおずおずと手を差し出した。
十五夜はその手をそっと包み込む。


「僕は、君の味方だよ。これから先、君に何かあったら、僕は必ず助けると誓うよ。もう逃げない。・・・これで、僕も君の手を握った人の中に、入れるだろうか?」
『・・・はい。』
そう言って、咲夜は笑顔を見せた。
「!!!」


笑った。
咲夜が僕に笑顔を見せてくれた。
そうか。
こんなことで、僕は君を笑顔にできたのか。
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