蒼の瞳、紅の瞳
■ 6.来訪の理由

「咲夜―!!!!」
白哉と二人でまったりとしていると、私の名を叫びながら、襖が勢いよく開かれた。
「咲夜!僕の咲夜だ!!!」
そう言って、私に抱き着いて来ようとする。


しかし。
その手は、私に届くことなく、彼の綺麗な顔は畳に叩きつけられた。
白哉が咲夜を抱き寄せたためでもあるが、彼の着物の裾を踏んだ人物が居るのである。
「何をしようとしているのですか?咲夜さまは貴方なんかのものではありません。」
裾を踏みつけた少年は男を冷ややかに見つめて言った。


『響鬼か?』
「はい。お久しぶりです。咲夜さま。」
「ぐえっ。」
そう言って、響鬼は男を踏みつけながら咲夜に近寄ってくる。


『・・・相変わらずのようだな。』
これには咲夜も苦笑いである。
「えぇ。まったく。この人は何時になったらまともになるのでしょうね。」
「私はもう諦めました。」
刺々した言葉を投げつける少年の後ろから叔母上が現れる。


『叔母上。』
「さて、揃ったようなので、本題に入りましょうか。そして、この方には早々にお引き取り願いましょう。」
「えぇ。そうですね。僕も早く帰りたいのでさっさと済ませてしまいましょう。」
「・・・二人ともひどい。」


『白哉、こちらは漣十五夜。私の大叔父にあたる。』
落ち着いたところで咲夜は紹介した。
「私は朽木白哉だ。」
「知っている。朽木家の現当主だろう?」


そう言って白哉を見る大叔父様の瞳に柔らかさはない。
白哉は全く堪えていない様子だが。
『大叔父様は普段、霊王宮にいらっしゃるのだ。霊王様の筆頭家臣として。』
「・・・本当なのか?」
白哉は信じられないようだ。


まぁ、突然そう言われてもなかなか信じられないだろうな。
「えぇ。こんなのを家臣として選ぶなど、霊王様の趣味を疑いますが。あぁ、ちなみに僕はこれの秘書官です。・・・どう考えても貧乏くじですよね。」
溜め息をつきながら響鬼が言う。


「ちょっと?響鬼それはひどくない?」
「私もそう思います。ですが、白哉さま。残念ながら、事実です。・・・非常に不本意なことですが。」
「天音まで・・・。」
彼はそう言って項垂れる。


『だから、大叔父様はこんなにお若いのだ。あそこは時間の流れが此処とは違うのでな。これでも、山じいと同じくらい生きているのだぞ。』
そう言われて、白哉は彼をまじまじと見つめる。
「どう見ても、浮竹や京楽などより若いではないか。」
『あはは。そうだな。』


「それで、その霊王宮からわざわざここにきて、私を連れ出したのは、何故なのだ?」
霊王宮と聞いても白哉は大叔父様に敬語を使うことすらしない。
いや、使う必要がないと判断したのだろう。
流石白哉だな。
咲夜は内心苦笑する。


「咲夜が、朽木の小僧などに嫁ぐからだ!!!」
あぁ、やはり。
この人は私の結婚が気に入らないのだ。
だから、邪魔をしに来た。
どんな理由があるのか知らないが、この人は私を漣に残らせたがっていた。


「小僧だと・・・?」
小僧呼ばわりに白哉の気配が剣呑なものになる。
「咲夜、今すぐ、別れなさい。妻が居た男などにお前をやるなど勿体ない。」
『嫌です。』
咲夜は即答する。
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