蒼の瞳、紅の瞳
■ 5.大叔父

「・・・何をしているのですか?」
白哉が暫く様子を見ていると、窓から、呆れた様子の少年が現れた。
それを見た男の顔が明るいものになる。
「響鬼!ちゃんと伝えてきてくれたか?」
「えぇ。赤い髪の男に。」


赤い髪?
恋次か?
「頼んだものは?」
「ここに。」
少年は紙袋を取り出す。
中に入っているのはおそらく甘味だろう。


「そうかぁ。君はいい子だなぁ。」
そう言って響鬼と呼ばれた少年を撫でまわす。
「やめてください。鬱陶しいです。」
少年はすぐさま男を蹴り飛ばした。


「痛い!」
「いつもいつも気軽に触らないで下さいと申し上げているはずですが。」
そういって、転がった男に再び蹴りを入れる。
「うぐっ。」


「大体、未練がましいんですよ。すでに嫁に行った女など追いかけなくても、貴方に寄ってくる女は幾らでも居るでしょうに。」
「だってぇ・・・。咲夜は別だよ。大切なんだ。」
「今まで彼女を助けようともしなかった人の口から出る言葉とは思えませんね。」


「・・・天音殿。」
少年が男に蹴りをいれている様子を当然とばかりに見ている天音に白哉は声を掛けた。
「あぁ、白哉さま。お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。先ほどのご無礼をお許しくださいませ。」
そういって、彼女は頭を下げた。


「構わぬ。それで、あの男はいったい何者なのだ。私は何故連れてこられた。」
「あの方は、漣十五夜。・・・私の叔父にございます。」
「・・・叔父?」
どう見ても、若すぎると思うが。
見た目は天音殿とそう変わらない。


「あの方は普段、特別なところにおりますので。」
白哉の疑問をくみ取ったのか、天音がそう付け足す。
「漣と言うことは、私が連れてこられた理由は咲夜か?」
「・・・えぇ。恐らくは。そのうち咲夜殿もこちらに来ることでしょう。」
「そうか。」


「それまで、おくつろぎくださいませ。部屋を用意させますので。」
「あの二人は?」
「・・・放って置いても構いません。いつものことですから。どうぞ、こちらへ。」
天音はそう言って白哉を別室に案内した。


別室に案内されて、半刻ほど経っただろうか。
するりと部屋に入り込んできた人物が居た。
「咲夜。」
『やぁ、白哉。無事で何よりだ。』
「一体、何がどうなっているのだ?」


『すまないね。白哉が攫われるとは予想外だった。』
「天音殿の叔父上だと言っていたが。」
『あぁ、そうだな。つまり、私の大叔父だ。』
「私が連れてこられたのには、何か理由があるのだろう?」
『うーん・・・。君が私と結婚したからだと思う。』


「・・・は?」
『あの人は、私を漣から出したがらなかった。私が、朽木家に嫁いだのが面白くないのだろう。まぁ、そのうち大叔父様が私に気が付いてここに来るだろう。話はそれからだ。』
「・・・わかった。」
[ prev / next ]
top
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -