蒼の瞳、紅の瞳
■ 1.眠気

『浮竹。』
最近、雨乾堂で仕事をしていると、漣が俺の背中に寄りかかって、背中合わせで座っていることが多い。
というか、やたらとくっついてくるのだ。
いや、まぁそれは、昔からそうなのだが。


「何だ?」
『暇だ。』
そう言って浮竹にさらに寄りかかってくる。
漣は心を開いた相手に対して、戸惑いなく触れる。
相手が誰であろうと。
何年たってもこの無防備さは変わらず、信頼されていることに喜びを感じつつも、相変わらずの自覚の無さに、頭を抱えたくなる。


「・・・俺に言われてもなぁ。俺の仕事も今日はこれで終わりだ。」
『そうなのか?まだ、昼を過ぎたばかりだぞ?』
「あぁ。今日は仕事が少ないようだな。」
『・・・暇だな。こう暇だと、眠くなってしまうな。』
「そうだな。今日は天気もいいし。お前は最近よく寝ているな。一日どのくらい寝ているんだ?」


そうなのだ。
最近の漣は気が付くといつも眠っている。
『うーん・・・。昼寝だけで3時間は眠っているな。何だか最近眠くてな。』
「体調が悪いのか?」
『そういう訳でもないんだが・・・。ただ、眠い。』
そう言って、漣はごろりと寝転んだ。


「夜眠れていないわけではないんだな?」
『あぁ。夜もぐっすりと眠っている。』
「それならいいが・・・。」
『仕事がないなら、白哉のところにでも行こうかな・・・。』
そう言いつつも、起き上がる気配が無い。
いつもなら、仕事がないとすぐに白哉の元へ飛んでいくのに。


「俺は構わないぞ。今日は調子もいいしな。」
『うーん・・・。』
頷きつつも漣は何か考えているようである。
「どうしたんだ?」
『いや、なんでもない。』
「白哉のところには行かないのか?」
『・・・。』


「漣?」
返事がないため漣の顔を覗き込む。
「また、眠ったのか。」
最近の漣はいつもこんな風に眠ってしまう。


「失礼いたします。」
浮竹が咲夜に毛布を掛けていると、ルキアが現れた。
「どうした?」
「今月の瀞霊廷通信だそうです。」
「あぁ、ありがとう。」
そう言って差し出された冊子を受け取って、浮竹は、何となくぱらぱらとめくる。


「最近、姉さまはよく眠っておられますね。」
ルキアが咲夜の寝顔を見ながらそう言った。
「お前もそう思うか?」
「はい。それに、最近の姉さまはくっつきたがりです。いつも誰かにくっついています。兄様と居る時など特に。」


「俺もそう感じていたんだが、やっぱりそうか。どうしたのだろうな?」
「さぁ?調子が悪いようには見えませぬし・・・。」
咲夜の寝顔を眺めつつ、二人で首をひねる。


「失礼する。」
「兄様?」
そうしていると、白哉がやってきた。
「白哉か。どうしたんだ?」


「書類を持ってきた。これを頼む。」
白哉はそう言って書類を数枚差し出した。
「・・・咲夜は眠っているのか?」
咲夜に気が付いたのか、白哉がそう問うた。
「あぁ。他人が近くに居るのに、これだけ熟睡だものな。昔の漣なら考えられない。」
「そうなのですか?」


「あぁ。昔は眠っていても人の気配があると、すぐに目を覚ましていた。だから、俺や京楽でさえ、そんなに漣の寝顔を見ることがなかったんだが。」
「そうか?私の前では昔から熟睡していたが。」
浮竹の言葉に白哉は不思議そうにそう言った。


「お前は昔から、特別だったんだな。」
「私だけでなく父上やじい様の前でも咲夜は普通によく眠っていたぞ?突然邸にやってきて、眠って帰るだけのときもあったくらいだ。」
「朽木家はそれだけ安心できる場所だったのだろう。」


「隊の宿舎に泊まる時以外咲夜はほとんど朽木家に泊まっていたからな。漣家に居る時間よりも朽木家に居る時間の方が長かった。咲夜の部屋があったくらいだ。」
「まぁ、こいつにとって漣家はそう温かい場所ではないからな。仕方がないと言えばそうなんだが。」
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