蒼の瞳、紅の瞳
■ 3.歯が立たない

その場に残った蓮と玲奈は、顔の赤い咲夜を見つめる。
彼女は白哉が去って行った方を恨めし気に見つめていた。
その表情に、この人にも敵わない人が居るのだ、と二人は内心で呟いた。


・・・意地が悪い。
私の反応を完全に楽しんでいる。
あぁ、もう。
白哉はいつもずるいのだ。
きっと、私があの瞳に弱いことなんてお見通しなのだ。


「えっと・・・先生?大丈夫ですか・・・?」
蓮が恐る恐る咲夜に声を掛ける。
「呆れた。貴女、朽木隊長には歯が立たないのね。そんなに強いのに。」
『う、五月蝿いぞ!・・・仕方ないじゃないか。あんなのずるいだろう。』


「まぁ、それもそうね。あんなに全身で愛を向けられたら敵わないわね。相手があの朽木隊長ならなおさら。・・・あんなに表情が変わるなんて知らなかったわ。」
「朽木隊長も先生の前でだけはあんなに柔らかい表情になるんですよ。ね、先生?」
蓮が楽しそうに言った。


『二人とも、午後の修行を楽しみにしておけよ。』
咲夜が恨めしそうに言った。
「望むところよ。」
玲奈は気にせず、そう言い放つ。
「僕だって!じゃあ、僕はそれまでに仕事を終わらせておきますね。」
蓮はそう言って、駈け出していく。


「私も行くわ。貴女もそんなところに居ないで仕事をしたら?また、朽木隊長に遊ばれたいのなら別だけれど。」
『!!』
玲奈の言葉に咲夜はすぐに立ち上がる。


『書類配達に行ってくる!!』
そして逃げるように、六番隊舎から出て行った。
「書類も持たずにどこに行くのかしら。ふふふ。可笑しな人。」
そんな咲夜を見て、玲奈は笑いながら仕事に戻ることにしたのだった。


まったく、白哉の奴。
あの一件以降、やたらと私をいじめやがって。
人前でもよく触れてくるようになった。
あれか?
これは、白哉に見合いまでさせたことのお返しなのか!?


なんとなく六番隊には居たたまれなくなって、咲夜は三番隊に向かっていた。
その間、頭の中は白哉への文句でいっぱいである。
『イヅル!!』
そう言って遠慮なく窓から三番隊舎に侵入する。
「咲夜さん?」
突然現れた咲夜にイヅルは書類整理の手を止めて首を傾げた。


『ちょっとここに居させてくれ。』
「?まぁ、いいですけど。どうしたんですか?」
『・・・白哉がいじめる。』
「・・・は?咲夜さんがいじめているのではなくて?」
『君の中で私はどういう人間なんだ・・・。』
イヅルの言葉に咲夜は長椅子に座ってうなだれる。


「いや、咲夜さんが朽木隊長をからかっている姿が印象に残っているもので。」
『それは・・・そうだが。だって、白哉の奴、みんなの前で、あんな・・・。』
先ほどの色を含んだ表情と声を思い出して、咲夜は赤面する。
・・・あれは夜の顔だった。
「あぁ、なるほど。惚気ですか。それじゃあ、僕は仕事に戻ります。」
咲夜の様子にイヅルは呆れたように、再び筆を進め始めることにした。
[ prev / next ]
top
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -