蒼の瞳、紅の瞳
■ 2.牽制

『おや?そんなに集まってどうしたんだい?』
そんな声と共に咲夜と白哉が現れる。
隊士たちは次々と二人に挨拶をした。
「先生!」
『玲奈も居るのか。それで、何をしていたんだ?』


「ふふふ。みんなと仲良くなっていたんですよ。」
蓮が楽しそうに答える。
『へぇ。良かったな、蓮。玲奈も。』
「はい!」
咲夜は蓮の頭を撫でた。
そんな咲夜を白哉はじっと見つめている。


「・・・咲夜。」
『なんだい?』
白哉の呼び掛けに咲夜は振り向いた。
「・・・。」
白哉は無言で咲夜を見つめる。


『ふは。君は、本当に可愛い奴だなぁ。君のことも撫でてやろう。』
そう言って蓮から手を離すと、白哉の頭を撫で始める。
隊士たちは目を見開いている。
蓮と玲奈はもはや見慣れたのか、苦笑いだ。


「・・・やめろ。」
そう言いつつも振り払う気配が無い。
『嫉妬か?嫉妬なのか?可愛いな。』
咲夜は白哉の顔を覗き込みながら言った。
完全にこの状況を楽しんでいる。


「やめろと言っている。」
白哉はそう言って咲夜の手を掴んだ。
『いいじゃないか。可愛いぞ。』
咲夜は嬉しそうな笑顔だ。


「・・・可愛さなどいらぬ。」
『本当なのに。白哉程可愛い奴を私は知らないぞ?』
その言葉に白哉は内心ため息をついた。


全く、本当に自覚がない。
そして、得意気になって居る咲夜に反撃をすることにした。
まぁ、余計な虫が付かないためのけん制も込めて見せつけるつもりだが。


「ほう?私は知っているぞ?」
そう言って咲夜に色を含んだ視線を向けた。
雰囲気が変わった白哉に咲夜が固まる。


最近気が付いたことだが、咲夜は私のこの目に弱いらしい。
それを心の中で笑いつつ、白哉は咲夜の耳元に唇を寄せた。
そして、本当に小さな声で、咲夜だけに聞こえるように、色をたっぷり含んだ声で囁いた。


「咲夜よりも可愛い奴を私は知らぬ。」
『ひゃ!?』
そう囁いて咲夜から離れる時に彼女の耳に息を吹きかけることも忘れずに。
すると咲夜は座り込んでしまう。


真っ赤な顔。
瞳まで潤んでいる。
『びゃ、白哉の、莫迦!』
可愛い奴だ。
白哉はそんな咲夜を満足そうに見つめた。


「私で遊ぼうとするからだ。」
『だからって!!』
「なんだ?」
あたふたしている咲夜に対して白哉は平然と答える。


『こんな、ところで、そんなの、ずるいじゃないか・・・。』
咲夜は小さな声で言った。
「ここでなければいいのか?」
白哉はしれっと答えた。
『そ、そんなこと言ってないだろう!!!もう、いい!!!白哉の莫迦!!』
そう言って咲夜はそっぽを向いた。


莫迦と言われるのも嬉しいとは、末期だな。
白哉は内心苦笑しつつ、周りで顔を赤くして言葉を失っている隊員たちに声を掛ける。
「何を呆けておるのだ。仕事に戻らぬか。」
その声と瞳には先ほどのような色はなく、すでに隊長のものになって居る。
それで我に返ったのか、隊士たちは慌てて仕事に戻っていった。


それから白哉は、顔を赤くして、腰を抜かしている咲夜を横目で見て、咲夜にしか見えないように口角を上げた。
それに気が付いた咲夜はさらに恥ずかしくなったのか、両手で顔を隠してしまう。
それを一瞥して、白哉もまた、踵を返して仕事に戻っていく。
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