蒼の瞳、紅の瞳
■ 1.謝罪

十三番隊で仕事をしていた咲夜と蓮が六番隊に戻り、一週間が経った。
しかし、二人に鋭い視線を向ける者は居ない。
何故なら。


『白哉!』
「なんだ?」
『ふふふ。休憩にしよう。』
「そうだな。」
そんな何気ない会話から二人の仲睦まじさが滲み出ているから。


もちろん、それを見せつけるために、二人きりの時に限らず、互いを見かけたらところ構わず、声を掛けあっているのだが。
白哉の表情の柔らかさに、隊士たちは目を丸くしている。
そして、今まで咲夜に指導を受けていた蓮を一般隊士とともに仕事をさせている。
蓮の仕事ぶりに周りの隊士たちは目を見開いた。


入隊して二か月ばかりの新人が、あっという間に席官レベルの仕事を仕上げるのである。
さらには、虚討伐の任務も問題なくやり遂げた。
周りに咲夜が指導していたということは本当なのだと知らしめたのだ。
「すべて、先生の指導のお蔭です!」
あれやこれやと質問攻めにあっていた蓮は笑顔でそう言った。


屈託のない少年の笑顔である。
こんな子が人妻に囲われるなど、だれが言い出したのだろうか。
周りの隊士たちは皆で首を傾げた。
「南雲、あの噂は嘘だったのか?」
一人の隊士が蓮に問う。


「すべて嘘ですよ。僕と先生に関するものも、先生と朽木隊長に関するものも。先生の指導はとても厳しくて、そんな暇はありません。それに・・・。」
「それに?」
「僕はお二人を近くで見ていたのですよ。あれを見せつけられて、間に入れると思いますか?」


「「「思わない。」」」
蓮の問いに複数の隊士が答える。
「でしょう?」
蓮はその様子に笑う。


「でも、喧嘩していたのは本当だろう?」
また違う隊士が問うた。
「あれは、お二人の作戦です。演技だったんですよ。」
蓮はそう言った。


「そうよ。」
それに応えるように声が上がる。
蓮の周りに居る隊士たちはその声の主を見て、気まずそうになった。
「玲奈さん!」


「蓮、咲夜さんが午後から修行をすると言っていたわ。」
あの後、玲奈もまた、咲夜に修行をつけてもらっている。
解毒も知らずにあんな斬魄刀を使われたら危険すぎると、咲夜が修行に参加させたのだ。
玲奈もそれから、真面目に修行に取り組んでいる。


「はい!解りました!」
「それから・・・。」
そう言って、玲奈は隊士たちに目を向けた。
「みなさん、色々とお騒がせいたしました。」
そして深々と頭を下げる。
その姿に隊士たちは目を見開いた。


「我が二宮家は、とんでもないことをしておりました。私は何も知らなかったとはいえ、朽木夫妻と蓮、その他多くの方々に多大なご迷惑をおかけしました。・・・噂を流したのは私です。蓮、本当にごめんなさい。」
そんな玲奈を見て蓮は笑った。
「もういいですってば。僕も先生たちも、もう気にしていません。」


「・・・そうね。私がここに居られるのは咲夜さんのお蔭です。一族が追放される中、咲夜さんは私に手を差し伸べてくれた。私の汚いやり方を許してくれたのです。これからは、漣玲奈として、自分自身を誇れるように精進していく所存でございます。どうか、よろしくお願いします。」
もう一度、玲奈は深く頭を下げた。


「はい!こちらこそよろしくお願いします!!」
皆が沈黙する中、蓮がそう答えた。
それに続いて、他の隊士たちも
「よろしくな。」
「よろしくお願いします。」
という声を掛ける。


以前の玲奈ならこんなことはしなかった。
皆がそう思って居るのだろう。
頭を下げたままの玲奈に次々と声が掛けられる。
涙が溢れてくるのが解る。


「ほら、玲奈さん。頭を上げて顔を見せてください。」
そう言って蓮は玲奈の肩をもって顔を上げさせた。
「何、泣いているんですか。」
玲奈の顔を見た蓮は困ったように笑った。


「う、煩いわね。だって・・・こんなこと初めてなんだもの。」
玲奈はそう言って顔を赤くする。
「それで、気分はどうです?」
蓮が聞く。
「・・・最高よ。」
玲奈がポツリと答える。
そんな玲奈の様子に周りの隊士たちも笑顔を見せたのだった。
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